いま乗るルノー・クリオ・ウィリアムズ 93〜96年生産の「極上」の味とは
公開 : 2017.10.07 08:40 更新 : 2017.10.07 15:00
お好きなかた、多いですね? ひと味ちがうルノー・クリオ「ウィリアムズ」。それも、極上のコンディションです。乗った感じはどんなものでしょう。試乗記です。
もくじ
ー 量産車メーカーがぶつかる「大きな壁
ー 受け継いだルノー5GTターボの精神
ー 「座を明け渡せ、新しいチャンピオンの登場だ」
ー クリオ・ウィリアムズの内装 どんな感じ?
ー 当時のレースを振り返る
ー いま、クリオ・ウィリアズム1を手に入れるなら
ー ルノー・クリオ・ウィリアムズのスペック
量産車メーカーがぶつかる「大きな壁」
量産車メーカーが性能至上のモータースポーツ界に挑むと、はなから大きな壁にぶつかる。「飯の種」になるモデルを大量に売りさばいて、小国が羨むような年商を稼ぐ超大手メーカーになれても、その反面、たかが量産車メーカーと軽く見られることもあるのだ。そのメーカーのエンブレムがフロントに存在するだけで、誰も大きな期待を寄せて熱烈に語ってはくれない。
しかし、知名度の高さゆえに、スポーツカー専門メーカーでは考えられない身近なイメージをその製品に与えることもできる。そして、量産車の高性能バージョンを手にした数十万人、ときには数百万人ものユーザーを、モータースポーツという夢の世界にのめり込ませるのだ。
メーカーは控え目に価格を上乗せして高性能モデルを売り出し、ツーリングカーレースやワールド・ラリー・チャンピオンシップといったレースに送り込む。少しでも良い成績を収めれば、モータースポーツ界の名声がまた新たな売上をもたらす。
ルノー・クリオ・ウィリアムズの場合、F1での勝利に預かって、ただその名前を付けるだけで良かった。このクルマは、ナイジェル・マンセルがドライバーズ・チャンピオンシップを、またウィリアムズがルノーのエンジンを載せたマシンでコンストラクターズ・チャンピオンシップを獲得した輝かしいシーズンの翌年に当たる1993年に発売された。
公正を期すために断っておくが、こうした手管を利用したメーカーは決してルノーが初めてではない。何十年も前からF1やラリー、あるいはル・マンでの優勝が容赦なく商業目的に利用されてきた。
しかし、ウィリアズムチームのエンジニアがこのクルマになんのインプットも提供していないことが大きな批判を招く恐れもあった。実際、1993年7月号のMotor Sport誌には、「薄っぺらなマーケティングの策略としてテストそのものを止めてしまっても良かった」と記されている。ただし、「とても楽しめるクルマだったから」ともレポートされている。
それも意外なことではない。ルノーには、ドーフィン・ゴルディーニにまで遡る、乗り手の血を騒がせるロードカーを作ってきた歴史があり、このクルマがその当時の最新バージョンだからだ。