ロードテスト(8) 日産マイクラ ★★★★★★★★☆☆

公開 : 2017.10.07 12:10  更新 : 2021.03.19 11:28

 

はじめに ▶ 意匠と技術 ▶ 内装 ▶ 使い勝手 ▶ 乗り味 ▶ 購入と維持 ▶ スペック ▶ 結論

走り

ルノー-日産の898cc直3ガソリンは、他社の最新コンパクトカーが積むダウンサイジングユニットとはやや異なる趣を見せる。同クラスの自然吸気エンジンより、幅広いトルクバンドと優れたドライバビリティを持つが、同価格帯でやや排気量の大きいターボユニット、たとえばシトロエンC3ピュアテック110やフォードフィエスタ・エコブースト125のそれにパフォーマンスで対抗するには、力強さが足りない。

また、この90psのIG-Tエンジンは、エミッションで他車に大きなアドバンテージがあるわけでもない。これなら、よりパワフルなルノーの1.2ℓ直4ターボを積んでもらいたいものだが、おそらくは軽さと経済性、コストパフォーマンスと動力的なパフォーマンスのバランスを考えての採用なのだろう。

このエンジンの軽さが寄与するハンドリングについては後述するが、動力性能に関しては、目立つところはないものの、ライバルに見劣りしないタイムをマークする。

同程度の馬力を発揮する自然吸気モデル、たとえばマツダデミオの1.5ℓモデル辺りは、48-114km/h加速で、変速しながらなら11秒程度、4速固定ならその倍ほどかかる。これがC3ピュアテックなどの強力なターボ車なら、全車が10秒、後者が15秒といったところだ。

今回のマイクラは、これが11.7秒と16.9秒で、フレキシビリティはなかなか上出来。ただし、同程度のエンジンを積む起亜リオは、わずかながらこれを上回る。

実際に公道を走ると、マイクラのエンジンは平穏なトルクデリバリーと、最新の3気筒らしい回りっぷりを見せる。だが、目を見張るような活発さや、走りに没頭できるような熱さは感じられない。

それでも、かつてテストして同じエンジンを積むクリオよりはパフォーマンスに優れ、しかも高級な欧州車に近い運動性の洗練ぶりも示してくれる。

シフトレバーには手応えと動きの明確さがあり、クラッチペダルにも適度に重い。エンジンは十分に静かで、車内騒音は48km/h走行時で3dB、3速でレブリミットまで回した際には5dB、それぞれリオより小さい。

テストコース

90psのパワーに勝るグリップを持つマイクラは、攻めた走りをしても破綻することがない。サスペンションはクルマの安定性を損なうことなしに、タイヤのグリップ限界まで攻めるに十分なほどボディの動きを食い止める。もっとも、まともなスモールカーは、たいていそういうものだが。

その一線を越えると、電子制御のトラクション/スタビリティ・コントロールがエンジン出力を絞り、ブレーキを穏やかに介入させる。それは走りを阻害するというよりは、パニックに陥らないよう補助してくれるものだ。ただし、そこに至るまでのグリップとトラクションは不満のないものだ。

電子制御デバイスはキャンセルできるが、それはそのためのスイッチではなく、トリップコンピューターを介して行う。だが、それによってハンドリングが元気になるわけではない。フィエスタのような活発さは感じられないというわけだが、基本的なスタビリティの良さによって、刺激的な走りにも堪えうる。

T6への登りでは、3速で力強く引っ張れるほどではないが、ガソリンターボを積むライバル車でも似たようなものだ。

サスペンションはT4の後での沈み込みとT7の後での跳ね上がりを、実にうまく処理する。クルマがリアブレーキの調整でピッチングをコントロールしているとしても、それを体感することはできない。

発進加速

テストトラック条件:ドライ路面/気温12℃
0-402m発進加速:18.7秒(到達速度:121.3km/h)
0-1000m発進加速:34.3秒(到達速度:153.0km/h)

キア・リオ1.0 T-GDI 3 エコ
テストトラック条件:多湿路面/気温8℃
0-402m発進加速:17.7秒(到達速度:127.1km/h)
0-1000m発進加速:32.7秒(到達速度:155.8km/h)

制動距離

テスト条件:乾燥路面/気温12℃ 97-0km/h制動時間:2.79秒

キア・リオ1.0 T-GDI 3 エコ
テスト条件:多湿路面/気温8℃

★★★★★★★★☆☆

 

はじめに ▶ 意匠と技術 ▶ 内装 ▶ 使い勝手 ▶ 乗り味 ▶ 購入と維持 ▶ スペック ▶ 結論

関連テーマ

おすすめ記事

 
最新試乗記

人気記事