知ってた? ポルシェ964「フラットノーズ」 元オーナーは元首 試乗記
公開 : 2017.10.07 19:10
極めて異端 964フラッハバウのディテール
この種のクルマによくあることだが、超あいまいな血統に関しては一定の混乱がつきまとう。全てのフラットノーズ車が、フラットノーズを備えているとは限らないから、という理由もあるだろう。
また、日本市場向けの10台のX83は旧来のポップアップヘッドライトとサイドストレークを備える一方、日本以外の地域向けの27台のX84版は見慣れた968風フリップアップユニットを備え、米国市場向けの39台のX85版のライトも同様であった。
ところが、混乱に拍車をかけるように、米国には、さらにヘッドライトの処理を除く全ての物理的変更を加えた17台の非フラットノーズ「パッケージ」というモデルが輸出されることになっていた。
ボディのこうした改造は、新しいフロントスポイラーと959と同様のエアインテークを備えたリアウィングに及んだ。パーツの一部はテックアート社が製作。特にキャビンの処理など、全く同じクルマはふたつと存在しない。希望するスピーカーから電動シートアジャスター、上部彩色のフロントガラス、それ以外にも多くの装備を指定することができた。51人の投機家が今回のクルマと同じX88 3.6ℓのターボSエンジンを選択し、メーカーが公式に、ヘッドのリワーク、インレットマニホールドの修正、オイルクーラーの追加、そして4本マフラーなどのカスタマイズを加えたという記録が残っている。
このページの主役の場合、ほぼ全てのオプションが指定されているが、最初のオーナーを考えればそれほど驚きではない。ロンドンの金融街に佇むこのクルマは、23年後の今でも場違いには見えない。洗練された18インチのカレラカップアロイホイールを履いたメタリックブラックのボディは異様なオーラを放っている。
詩的な素晴らしさというよりも、比較的なじみのあるひねりを加えた快適さが同居している。前世代のフラットノーズほど激しく周囲の目を引かず、控えめでさえある。特別なクルマであることは感じ取れるものの、正確にどこが変更されており、特別であるかを特定するには少し時間がかかる。
まるで最初からそう設計されたようだ。そのスタイリングにはどちらかといえば965の面影を見る。しかしながら、誰もが、正体がわからないまでも、このクルマを畏敬の目で見ているようにも感じられた。
一方のインテリアは見慣れたポルシェとそう変わらない。