クーペ・フィアット誕生秘話 デザイナー、クリス・バングル独占取材

公開 : 2017.10.08 10:40  更新 : 2021.01.30 21:48

勝つつもりのないコンペで勝った

「ピニンファリーナが、ティーポをベースにクーペを開発するアイデアを出してきたんです。ピエルジョルジョ・トロンヴィルが、ピニンファリーナのライバルになり得るのはフィアット・チェントロ・スティーレのデザイナーだけだと言ってくれました」

「当時、わたしはフィアット社内のほぼ全てのデザインコンペに負け続けていたため、自分たちにも勝利のチャンスがあるかとトロンヴィルに聞いてみたんですね。すると彼は静かにこう言いました。『ティーポベースのクーペは確かに奴らのアイデアだ。エンジニアリングも全て奴らがやり、奴らの工場で作り、そしてクルマのサイドに堂々とピニンファリーナと入れるだろう。そうなることを君はどう思う?』とね」

その言葉に感化され、全てをピニンファリーナに持っていかれてたまるかとバングルは奮起した。結果、バングルとそのチームは大胆なデザインを採用することにした。そして、見事デザインコンペに勝利したのである。

「勝ち目がないと思われていたことで、勝ちを意識せず気楽に挑めました。そのため、大胆なデザインを採用することができたのだと思います。今になって思えば、『これはちょっと』と思うような多くのデザイン提案を採り入れることもできました」

「このクルマは最初から『変』でしたが、数々のアイデアをまとめ、走行可能な製品に仕上げる頃にはもっと奇妙なデザインになっていきました。対抗するピニンファリーナのエクステリアデザインは当時見ていないですが、後になって、その敗れたピニンファリーナのデザインは、プジョー406クーペに強い影響を及ぼしているのでないかと思いました」

「一方、クーペ・フィアットのインテリアのデザインはピニンファリーナが手がけました。できあがったインテリアはこのクルマにマッチしていると思います」

インテリアは、まちがいなくティーポ175の重要な特徴のひとつだ。ブラックとグレーのプラスティックばかりのキャビンが主流だったあの時代に、表面の一部とドアパネルに塗装した金属パネルを使ったのは大胆なアプローチだった。

しかし、その大胆さはエクステリアに到底及ばない。

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