回顧録(6) パガーニ・ゾンダFに試乗 価格高騰、「狂気」が理由?
公開 : 2017.10.14 10:10 更新 : 2017.10.14 11:22
野性に狂う602ps
それにしてもワケがわからない。なぜって、冒頭にも書いたとおり、コトが始まるにあたってナンのザワつきも警告もないからだ。こういう感じは体験したことがない。ということで、ゾンダFでのコーナリングの開始から終了までに起こった出来事をもう1回おさらいしてみよう。
まずコーナー進入速度はすごく速い。でも、カーボン・セラミックのローターを擁するバケモノ級のブレンボがキョーレツに速度を落としてくれるから心配はない。というか、そのときはナンの警告も発せられない。
カーボンの車体がエイペックスをカットする前に、3速から2速へのシフトダウンを完了。それ以上は無理というくらいの正確さでもって。と同時にステアリングホイールをさらにもう少し切りこんで、横Gがピーク値に達する。
この段階でも、やはりすべては平和なままだ。出口に向けスロットルを開けていくと、まさにそのときコトは起きる。エンジンベイのなかでナニモノかが野生に目覚め、というか野生に狂い、かくして僕は全身全霊で対処しないといけないことになる。事態が平穏でなくなるのはホンの何分の1秒かの間でしかなく、したがって何分の1秒か後にはまた平穏になっている。
ゾンダFでドリフトをキメるのは、いってみればヒョウの頭をナデナデして戻ってくるようなものだ。腕をかみ切られたりすることなしに。つまり、そいつを手なずけるのに等しい。
FよりおとなしいSに乗ったときですら、パワーに不足は感じなかった。7.4秒の0-160km/h加速タイムを記録したのち293km/hをマークしたゾンダSは僕をビビらせた。
もっというと、あのときミルブルックのテストコースでさらに踏み続けていたら300km/h以上はでそうだった。そういうわけで、ゾンダSに対してすら、もっとパワーがあればいいのに、なんて思った覚えはない。