回顧録(6) パガーニ・ゾンダFに試乗 価格高騰、「狂気」が理由?
公開 : 2017.10.14 10:10 更新 : 2017.10.14 11:22
ゾンダを味わう
ゾンダFのインテリアは基本部分に関してはC12Sのと同じで、ただしディテール、わけても計器盤のあたりが大きく違っている。
わざわざタコメーターを注視せずとも的確なタイミングで変速できるようにとシフトライトが追加されているし、ギアポジションのインジケーターもある。ひょっとして、そのうちシーケンシャル・ギアボックスがついたりするのだろうか?
シートにギュッと抱かれ、両脚をゆったり伸ばし、見まわせば視界は良好。左右のミラーが新たにウイングマウントになったのも改善点。ナルディ製ステアリングホイールの位置はバッチリ完璧だし、同様にペダルボックス(世界一セクシーなデキのイッピン)の位置も素晴らしい。
公道用のセッティングで乗ると、ゾンダFの乗り心地はイイ。望外にイイ。オーリンズのダンパーは1本あたり4つの調整箇所があり、それらはプライマリーとセカンダリーとにふたつずつ振り分けられている。
パガーニ的には公道上ではフルソフトのセッティングがオススメで、その状態だとゾンダFの乗り心地はさしずめ17インチを履いたポルシェ・ボクスターのそれに似ている。ただし、突起の鋭いカドを丸めてしまう能力にかけてはあれほどビューティフルではないけれど。
ステアリングは速くて正確。Fでもギア比は変わっていないけれど、セルフセンタリングはほとんどしてくれなくなっている。クルージング重視度が高いと思われるSLRをふくめても、ライドコンフォートの水準がこれほど高いスーパーカーはほかにない。ゾンダF、ダントツに快適。
フルソフトのセッティングはトラクションを確保するうえでも有利だ。このクルマについているトラクションコントロールの仕事ぶりは相応に洗練度が高いのかもしれないけど、ゾンダFのスゴさをフルに体験したいなら電子制御の足枷はとっぱらってしまったほうがいい。
でもってその状態で2速フルスロットルが可能であるというのは、とりもなおさずグリップのスゴさを物語っている。2速では、というか3速でも、ゾンダFでのフルスロットル体験はハンパじゃない。
前の日に体験したポルシェ911ターボSは0-160km/hを8.5秒でこなすけっこう速いクルマだけど、それと較べてもゾンダFのパフォーマンスは別モノだ。同じカテゴリーに入れるのは無理がある感じ。まったく別世界。
孤高の存在であるマクラーレンF1とその他大勢のスーパーカーとの間に拡がるギャップを埋めることができるクルマがあるとしたら、それはゾンダFだ。体感上の速さはエンツォとまったく同ベルで、ということはカレラGTより上。
ゾンダFはまたその音が素晴らしい。ナニモノをもってしてもかえがたい。すなわちミッドレンジではフェラーリよりもボリュームたっぷりで、トップエンドではポルシェほどはレーシングしていない。
というか、フェラーリとポルシェのいいところを両方あわせたのよりもさらにエッチな音がする。今回僕が全開全負荷にできたのは3速までで、4速は途中までしか踏めなかった。速度でいうとメーター上230km/hあたりが上限だったけれど、それでもSに対するFのパフォーマンス上のアドバンテージはしっかりと確認することができた。