「100万人の命を救った男」 横滑り防止装置の開発者をインタビュー
公開 : 2017.10.14 18:10
あの日、運命を変えた場所へ
旅はアルペローグ近くにある凍結湖の真ん中から始まった。アルペローグは北極圏に隣接したスウェーデンの小さな村だが、主要メーカーが寒冷地仕様のテストキャンプを設置するため、冬季には村の人口は急増する。降雪期間中、毎週月曜日と金曜日には、エンジニアで満席になった12機以上の飛行機がこの小さな村を離発着するのだ。
月曜から金曜日まで、彼らは文字通りグルグルと輪になって、将来販売されるクルマが滑りやすい状況下でもわれわれを守ってくれるようにテストを繰り返すのである。
ちょっとした郊外ほどの大きさのある荒涼とした凍結湖の上での技術デモンストレーションのあと、30年ほど前にヴァーナー・モーンが助けを呼ぶことになった陸の孤島の町へと向かうことにした。
事故現場に最も近い町はアルペローグから南西約290kmの距離だが、低速走行するトラックや除雪車によって、凍結して起伏のある一車線の道を行くわれわれの行程は通常の2倍の6時間を要した。
路面は非常に滑りやすく、無数にある警告表示板の写真を撮ろうとしても、立つこともままならない程であった。
そうしてついにストロムズンドに辿り着くことができた。しかし、氷と雪に覆われて、町の道も地形もその方角の見分けすらつかなかった。
いくつかの幸運によって、この3500人の小さな集落からあの日ヴァーナー・モーンを救助に来てくれたレッカー会社を発見することができた。
今では会社のオーナーは変わっていたが、彼らは、当時ァーナー・モーンを救ったトミー・ビュルストロムを見つける方法を教えてくれた。彼こそが父親とともに1989年のあの日、新車のメルセデスを回収しに来てくれた男である。