フェラーリを買ったらどうなる? 「関係者」8名の証言 (回顧録11)
公開 : 2017.10.29 06:10
証言3:「900万円の目減りもなんのその」
名前
ポール・バチェラー
所有車
1996年型F355ベルリネッタ
多くのオーナーと同様、ポール・バチェラーも子供の頃からフェラーリが大好きだった。
「1960年代の話ですが、わたしはマロリー・パークのパドックで、レーシングドライバーのトニー・ディーンが乗る275GTBの押し掛けを手伝ったことがあります。それ以来、熱烈なファンになってしまったのです」
その体験から40年後、ポールはついに自分自身でフェラーリのステアリングを握る幸運を掴んだ。ただしそのときの周囲の状況は少々現実的すぎた。
「初めてフェラーリを走らせたのがラッシュ時の環状線だったのです。幸い、355はひどい渋滞の中でも簡単に運転できましたが」
彼はわが物にした355の魅力をこう語る。
「誰もが、どのくらい速いのかって聞いてくるのですが、トップスピードはもう1台のアシ車、BMW 528iと大差ありません。でもF355の魅力はとにかくエンジン・レスポンスの良さ。それを味わうために持っているといっても過言ではありません」
ポールは1年あたり平均約25万円をメンテナンスに費やしている。タイヤ代が2本で10万円(1セットで1万2000〜1万6000kmほど持つ)、15万円が走行距離無制限の保険料である。
「誰もが信頼性がないだろうと言いますが、わたしの355はまったく何のトラブルも経験していません。ブレーキ・パッドの減りも遅いですし、オイルもほとんど消費しない。いちばんお金を食うのがカムベルトの交換で、これは3年ごとに16〜20万円かかります」
ランニングコストは比較的安いが、ポールの355はリセールバリューの点で大きな問題を抱えている。走行距離は現在1万8000kmほど(新車時からのトータルで3万6000km)なのに、355の価値は購入後6年で1800万円からおよそ900万円まで下がった。それでも彼はこのフェラーリを愛してやまない。
「わたしはずっとV12に憧れていますから、次は550マラネロを手に入れるつもりです」