フェラーリを買ったらどうなる? 「関係者」8名の証言 (回顧録11)
公開 : 2017.10.29 06:10
証言4:「わたしはクラッシュで跳ね馬をやめました」
名前
スティーブ・クロプリー
所有車
1976年型308GTB
かつてフェラーリを所有し、それをクラッシュさせた経験がある本誌英国版編集総局長のスティーブ・クロプリーに独白してもらおう。
「わたしはあのときのショックと無力感を決して忘れません。事件はお気に入りの試乗コース、ウェールズのカントリーロードを飛ばしていたときに起きました」
「あれは確か1987年のこと、登場後間もない328GTBとわたしの’76年型308GTBを比較試乗しようという話が持ち上がったのです。基本的に同じモデルが11年でどう進化したのかを調べるのは確かに面白そうでしたし、実際328と比べるとわたしの308には『好ましい古さ』みたいなものが感じられてね。308の方がコーナリング限界は低かったですけど、その限界を超えたときの挙動は穏やかで読みやすかった。初期型308の性格はどのV8フェラーリとも違います」
「それはともかく、かなりご満悦でコーナリングの撮影をしていたときのことです。わたしはまず328に乗り込んで、短い坂を下り、ハードにブレーキングし、左に90度曲がるコーナーへと突っ込んでいきました。実にいい感じでね。続いて自分の308に乗り換えた。このクルマもいい感じ……のはずでした」
「似たようなサウンドを発し、ドライビングポジションもコントロール類もほぼ同じ。わたしは308をスタートさせて気楽な気持ちで——何かほかのことを考えながら——ひとつ大事なことを忘れていたのです。308のブレーキが328ほど優秀ではないという事実を」
「結果、わたしは同じコーナーにかなりのオーバースピードで進入し、慌ててブレーキをかけてフロントホイールをロックさせてしまったのです」
「幸いなことに、そのコーナーの付近だけ道路脇が深い谷ではなく、ランオフ・エリアのようになっていました。クルマは50〜60km/hの速度で道路から飛び出し、少し跳ねて、しばらく滑ってから止まりました。わたしはFRPのカケラを拾いながら、修理代の額を想像してひとり涙したものです」