試乗 ジャガーE-タイプ 当時ジュネーブでの展示車両で発表の地へ
公開 : 2017.10.28 17:10
なぜE-タイプのデビュー 特別だった?
水曜日の3月15日午後4時30分にメディアや招待客が集まり始めた。レーシングドライバーのウォルフガング・フォン・トリップスとジョー・ボナーのふたりは肩を並べてボックスを見つめた。
ライオンズが登場し、カバーが取り払われると、ボックスの合板がドラマチックに倒れ、中からE-タイプが姿を現した。
最初の数秒間、不思議な沈黙が続いた。多分、集まったひとびとは、頭を左右に動かして現れたクルマの斬新なスタイルを理解し、認識しようとしていたのだろう。
集まった全員を外に案内して9600HPを披露する前に、ライオンズが簡単なスピーチをした。皆の注意が外のクルマに集まると、すぐさま885005はレストランの内部からジュネーブ・モーターショーの会場に輸送された。
当時、モーターショーでクルマを展示する際にはペルシャ絨毯を使うのがジャガーの習わしだった。ジュネーブ・モーターショーの写真を見ると、本当に美しい885005がなんとも見栄えのしない絨毯の上に載せられているのがわかる。
伝統に則って、スイス連邦大統領がショーの開会宣言をし、その後、ジャガーのブースに立ち寄り、ふたりいたスイスのジャガー輸入販売業者のうちのひとり、エミル・ルレイとこのクルマの詳細について談笑している。
ショーの開会と同時に、「スポーツカーの進化の新時代を開くクルマだという」THE MOTOR誌と、150mph(240km/h)の最高速で読者を驚嘆させたAUTOCAR誌の最初のレビュー記事が公表された。
ジュネーブ・モーターショーの方が話題になることが多いが、自分がいつも思うのは、レストランで行われたプライベートな発表会のことだ。
それはまるでキャバーンクラブでビートルズのライブを見たり、テレビでモンティパイソンの第1回放送を見るようなもの。これを目撃したひとたちは、歴史に残る特別な体験を共有したことになった。だからわたしもこれからジュネーブに赴き、オー・ヴィヴ公園を訪れる。もちろんシャシー885005のE-タイプに乗って、だ。