試乗 ジャガーE-タイプ 当時ジュネーブでの展示車両で発表の地へ
公開 : 2017.10.28 17:10
885005のE-タイプ、危うい時代
1990年末に、地方の自動車専門誌の巻末にレストアしたE-タイプクーペの広告が掲載された。E-タイプを探し求めていた、ピエール・ピテットというあるジャガーのエンスージァストがこの広告を見かけ、エキスパートにチェックを依頼した。
当時、ジャガードライバーズクラブ・スイスの会長であったウルス・ヘンルがチェックし、このクルマが最初期のE-タイプであるばかりではなく、ジュネーブ・モーターショーで発表されたクルマそのものだと報告した。
ピテットはすぐに購入したが、この発見の歴史的重要性を完全に理解していなかったせいか、エンジンを後期の4.2ℓユニットに交換しようとした。
しかし、一時はジャガーダイムラークラブ・スイスの会長を務めたこともあるピテットの息子が、885005の重要性を正しく理解していた。
息子はこのクルマを売却するよう父を説得し、更にはクリスチャン・ジェニーに電話をして、このE-タイプの買い取りを勧めた。ジェニーはこの話に合意し、レストアをゲオルグ・デニに依頼した。
このレストアがスタートしたのは2002年のことだった。デニは、手を振り、声を高めながら、興奮した様子でこのクルマのヒストリーを語ってくれた。
彼はただこのクルマのメカをレストアするだけでなく、その歴史にも夢中になった。彼の家族には研究者が多く、本人も子供の頃は考古学者を目指していた。レストアをしている最中に、この子供時代の情熱が蘇ったわけだ。
デニはこのE-タイプのレストアの作業内容について話し始めた。
「クルマを分解した際に、そのすべての歴史が明らかになった。初期E-タイプのヒストリーを書籍で学んでいたため、そこで語られていた開発プロセスを目の当たりにすることができたんです」
「例えば、最初はロードスターであったため、エンジニアがルーフをどこでAポストに溶接したのか、実際に見て確認できました。溶接作業後、885005は他のクーペを製造するための雛形としても利用されたんですね。これは、基本的に手作りのクルマです。ですからフロントガラスを特別にあつらえなければならなかったのもポイントです」
GBデニ・クラシックカーは、コンクリート製のジグの上で手たたきされた数少ないオリジナル・ボンネットの保存を含め、緻密にレストアした。実際、標準の量産モデルを885005と並べると、数百もの小さな違いに気づく。
最初に気づくのは、ジュネーブに展示されたこのクルマのルーフが量産車ほど平らではないことだ。こうした相違点が慎重に保存され、レストレーションで姿を消すことはなかった。
ジュネーブに近づく頃になって、ステアリングを握ることになった。