Dセグ・カブリオレ対決 メルセデスCLK350 vs アウディS4 vs BMW 335i(回顧録12)
公開 : 2017.11.03 16:10
CLK350、S4 大きく異る部分
またしてもミラーに映らなくなったからといって、忘れてはいけない。鮮やかに加速する2台に対して、CLK350の自然吸気V6は、絶対的な出力の点では見劣りするものの、それと気取られぬ滑らかさで7段のギアを駆使するATのおかげもあって、まるで空中を漂うような軽やかさでクルマを加速させる。
その加速能力は、この手のプロムナードカーを欲するユーザー層には十分だと受け取られるだろう。しかし、そのサウンドはうるさく感じられるし、レスポンスはドロンと鈍く、ステアリングフィールは曖昧で、操舵ゲインの立ち上がりも鈍い。
少なくともクルマ好きを興奮させる類のものではない。さらに言えば、トップを開けた状態でも閉めた状態でも、シャシーの路面対応能力はともに不足している。
端的に言ってメルセデスはソフト過ぎるのだ。
しかしアウディは反対に硬すぎる。締め上げられたバネとダンパーは、乗員に終始揺すられているような平和ならざる乗り心地をもたらし、フロントオーバーハングに重いV8が乗っていることを常に意識させられることになる。
ハナに掛かっているその重量は、ハイスピードのコーナリング時には安定性に寄与して、印象は良いほうに振れるのだが、その代わり低速コーナーでのフロントヘビー感は盛大で、ステア特性は強いアンダーステアに終始することになる。
S4が操縦安定性で唯一ライバルに勝るのは、ヘビーウエット路面などの悪コンディションに出合ったときに4WDシステムが発揮するトラクションぐらいだろう。
BMWはどうだったのか。
それは、ひとがBMWに期待するように走ってくれる。開発プロセスの中に商売上の妥協が紛れ込んだことは確かだが、にもかかわらず335iカブリオレは、BMWならではの身のこなしの鮮やかさを依然として味わわせてくれる。
もちろん比べてみればカブリオレはクーペよりも切れ味は鈍い。しかし、根っこのところでの美点は何も変わってはいない。操舵に対する反応は機敏で、手応えもしっかりしており、操縦性はドライバーにニュートラル・ステア感を与える麗しいもの。
DSCのスイッチを短く押して、電制スタビリティ・コントロールを一段浅いDTCモードにしてやれば、旋回姿勢の自由度はさらに幅広くなる。
しかし、この手のカブリオレにとって、ハンドリングの良さは優先事項ではない。プライオリティとして高いのは使い勝手のよさのほうなのだ。