絶滅危惧種「V型10気筒エンジン」 その魅力とは?
公開 : 2017.11.18 11:40
状況、理性では理解できるけれど…
なぜこのような状況なのか、理解はしている。
コンパクトなツインターボV8エンジンの方が、より大きい自然吸気V10エンジンよりもパッケージングで有利だ。
ターボと比べるとトルクも細いので、同じ出力を得るために回転数を上げる必要もある。現代社会に通用する経済性と環境性能を持たせることは、簡単ではないこともわかる。
そしてV12の存在がある以上、頂点に位置することもできない。より安価で優れた選択肢があったとしても、ボンネットの中で動く12本のシリンダーのために、高い金額をあえて支払うひとが少なくないことを、ベントレーやメルセデス・ベンツが示している。
ただ、このクルマに乗った後のわたしには、頭で理解していても、心で納得することが難しい。ランボルギーニのV10の雄叫びが耳に残る状況でこの原稿を書いているから、なおのこと難しい。
まだ、耳鳴りが残っている。しかし、この経験が記憶へと置き換わってしまうまで、エンジンの存在も背中のすぐ後ろに残っている感じがして、嫌いではない。
これまで騒がしいエンジンノイズを沢山聞いているが、このV10のものほど美しくメロディアスで、興味深いサウンドではなかった。
退屈な技術的な話はしたくないが、5の倍数のシリンダー数を持つエンジンは、本質的にアンバランスとなる。
ピストンの上下運動と、クランクシャフトの回転数とで、異なる振動が発生するため、正確に割り出したバランサーシャフトなどを用いて、振動を打ち消す必要が生じる。
その結果、メインストリームとは異なる、独特の和音をもつサウンドが生まれる。
加えて、V10がロードカーに搭載されたのが、V12よりも70年も遅くなった理由は、燃料供給の難しさにもあった。