いま乗るポルシェ997 GT3 RS 「芸術品」と言われるワケは
公開 : 2017.11.19 10:10
いまなお人気のポルシェ997 GT3 RS。マシンであり、文化であり芸術でもある、とテスターは言います。改めて人気の理由を探ります。
もくじ
ー プロローグ ヴァイザッハより愛を込めて
ー テイスティングのあとに浮かぶ言葉
ー 「良識やモラルのために、ためらう必要などない」
ー マシンであり文化であり芸術でもある
ー 番外編 よく聞くメツガー なぜすごい?
プロローグ ヴァイザッハより愛を込めて
2017年11月某日。長い峠道の終わりにある駐車場にたたずみGT3 RSが発する音に耳を傾けている。450ps 3.8ℓフラット6はしばらく前にイグニッションをオフにされたが、完全な静寂に戻ったわけではない。
まだ、パキンパキンと音を立てている。車体、ボディ・パネルや精緻なメカニカル・パーツがそれぞれ異なる材質、異なる形状と厚みでできているために、冷めていく時間が違うのだ。パキンパキン、パキンパキン。
このクルマは既に路上で7年を過ごし、その間に約48,000kmを走ってきた。恐らく、後期型997 GT3 RSの中で最もハードに扱われてきた1台だろう。
もとは広報車両で、これまでに数えきれない程ドリフトやスピンを繰り返してきたに違いない。ポルシェ広報は賢明にもそんな履歴について言及しないし、それを示す証拠もない。
パキンパキンと美しい音を発しながら、このクルマの情熱がゆっくりと冷めていく。
まずはこのGT3 RSがやってきた時のことをお話ししよう。GT3 RSは輸送車に積まれてやってきたが、最初の任務はショッピングだった。
幸いにも、この任務にはいくつかの選択肢が残されていた。とりわけ本誌長期テスト車両のまっさらな911がある。しかし、ほかの車両を選ぶなんて考えもしなかった。
スーパーカーで全く見当違いの事をするのが好きなのだ。ランボルギーニ・アヴェンタドールSVをマクドナルドのドライブ・スルーへ連れ出したのはわたしの自慢だ。そして、このGT3 RSの素晴らしい点は、スーパーカーにしては驚くほど使い勝手が良いことだった。
スーパーカーにしては幅が狭く、乗り心地も驚くほど良好だ。さらに4000rpm以下で運転している限りは静かでさえある。
トランクは大きく、カーボン・ファイバー製のリア・ウイングは、ポケットの中の無骨な鍵を探している間、ドイツからやってきたディスカウント・スーパーの買い物袋を置いておくのに最高の場所だ。
ただし当然、997 GT3 RSの素晴らしい点は他にもある。