いま乗るポルシェ997 GT3 RS 「芸術品」と言われるワケは
公開 : 2017.11.19 10:10
テイスティングのあとに浮かぶ言葉
ウイングを見て欲しい。そして、ミシュラン・パイロット・スポーツ・カップ2を、スタンス、カーボン・ブレーキ、デカール、そして、そのサーキットでの資質を示す雄叫びを。
ひどい渋滞の中でさえ楽しみは数多く用意されている。ステアリングの感触、ギア・シフト、そして、各ペダルの完ぺきに調和した踏み応えは、都会の制限速度以下でも味わう事ができる。
ここからが本番だ。少したとえ話にお付き合い頂きたい。もし、ここに最高級ワイン、ペトリュスのマグナム・ボトルがあったとしても、いきなり栓を抜いて、ボトルから直接ガブ飲みしたりはしないだろう。
つまりはそういう事だが、もう少しだけこのくだらないたとえ話を続けさせて貰えれば、スワーリングをして、そのアロマを嗅いでみるのだ。これでヴァイザッハ周辺では、2010年がヴィンテージイヤーのひとつに数えられるという事がわかる。
少しだけ口に含んでみよう。スピット・バケツに吐き出せば問題ない。まさにこのクルマは最高級ワインそのものだ。道は開け、体はほぐれている。この先に待ち受ける道のためにウォーミング・アップを始めたフラット6のエンジン音が聞こえる。
ある言葉が頭に浮かんでくる。それは「メカニカル」という1語だ。この言葉はまさにこのクルマの感触そのものであり、もし、これが言うまでもないことの様に聞こえたとしても実際はそうではない。
ほかの50代と同じく、自分はまだ30才だと感じているが、実際には30才のころどんな風に感じていたかなど思い出せない。結局自分でそう思い込ませているだけなんだろう。
同じように、最新の電動パワステ、パドル付きオートマティック車に慣れてしまえば、かつてある特別なクルマだけが持っていた全く違った感覚など簡単に忘れ去ってしまう。そんな昔のことではなかったのに。