いま乗るポルシェ997 GT3 RS 「芸術品」と言われるワケは

公開 : 2017.11.19 10:10

マシンであり文化であり芸術でもある

このクルマは可能性そのものである。たとえGT3 RSが最善をもたらしてはくれなくても、その高みへと連れて行ってくれるのはこのクルマなのだ。

0-100km/h加速や、最高速度、出力といったスペックを越えた未知の世界へ踏み出すべき時なんだろう。ニュルブルクリンクのラップ・タイムや、その他測定可能なもの、事実や数字だけでは説明できない世界だ。

つまり、すべてはこのクルマをどの様に感じ、そして、このクルマがどの様に感じさせるかだ。必要なのは、強靭な精神力であり、瞳に宿る輝きであり、この太くグリップに優れたミシュラン・タイヤに熱を入れることなのだ。

ハードに走り込む。サスペンションを動かすために負荷をかける。セラミック・ブレーキを正しく使う。一旦暖まればブレーキ・ペダルを通じて適切な感触が得られるようになる。そうすれば、ペダルは正しい位置におさまり、ヒール&トウを使ってのダウン・シフトも自然にきまるだろう。

ヒール&トウ? もうひとつの失われゆく芸術だ。

そしてこのクルマが911であることを思い出す。

早いタイミングでコーナーに侵入し、エンジンのパワーだけでなく、リア後端に張り出したそのレイアウトをも利用して、コーナーから脱出するのだ。

もし、リアに挙動を感じたら、ステアリングを少し戻してそのまま進むだけだ。そうすればまさに人車一体の瞬間がやってくる。

ドライバーの考えが乗り移り、このクルマはその意思のままに動く。そして駐車場にクルマをとめて我に返ると、クルマが冷えていくパキンパキンという音。

この瞬間を何度も何度も繰り返す事になるだろう。

まさにこれこそが、このクルマがこれまで運転したカタログ・モデルのGTシリーズの中で最高のポルシェであるだけでなく、すべてのクルマのなかでもベストの1台だという理由だ。

いつの日か再び巡り合えることを信じて。

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