比較試乗 アストン マーティンV8ヴァンテージ vs ポルシェ911(997) 前編
公開 : 2017.11.23 00:00 更新 : 2017.11.23 01:40
アストン マーティン・ヴァンテージが発表されました。血統を受け継ぐご先祖様がデビューしたときは、どんな評価だったのでしょう? 試金石となるポルシェ911と比べています。
もくじ
前編
ー 911はベンチマークではない
ー 考え得る「必要最小限のクルマ」
ー 911ミーツV8ヴァンテージ
ー まるでドイツ生まれのように
ー 911と明らかに違うところ
後編
ー ついにV8ヴァンテージが走り出す
ー 「わたしはこの道が大好きなんです」
ー V8ヴァンテージにしかできないこと
ー ひとつだけ断言できること
911はベンチマークではない
ウルリッヒ・ベッツはポルシェ911について多くを語ろうとしない。その姿勢はまるで、かつて自分が関わった偉大な業績を封印しているかのように思える。
考えてみればそれも当然のことだろう。
なぜなら、アストン90年の歴史の中で(まず間違いなく)もっとも成功した経営者である彼の立場からすれば、なにはさておき新型V8ヴァンテージについて語らなけらばならないのだ。
ベッツはアストンの歴代CEOの誰とも似ていない。彼はかつてポルシェ911のなかでも傑作の誉れ高いコードネーム993の開発に深く関わった人物である。
本人もよほど思い入れが強いのだろう。彼は今でも自ら手掛けた993を自宅のガラス張りのガレージに置いていて、テレビを見ていないときにはいつでもそれが見えるようにしている。
10年前、ポルシェが目指すべき場所とその価値を彼より深く理解していた人間は稀だったが、アストンに移籍後、彼が取り組んできたプロジェクトは、911よりモダンかつエクスクルーシブで、少し高価なライバルをプロデュースすることだった。これほどドラマティックな物語、そして皮肉には誰もが興味を示さずにいられないということを、彼自身も理解している。
しかし彼は「911は新型V8ヴァンテージのベンチマーク、あるいはプロトタイプとしてはまるで不適格でした」と断言する。
「これは本当の話ですが、われわれのプロダクトのベンチマークとして、ポルシェ911を設定したことは一度もありません。それがわたしたちにとって生産的な方向性だとは思えなかったからです。もちろんベンチマークに911を置く仮想のベクトルは理解できます。しかし、わたしはむしろデザインを企画/発想する段階から、アストン マーティンのパラメーターの枠内でわたしたちが『新たに生み出すクルマはどうあるべきなのか』というエモーショナルな感性を何よりも大切にすべきだと思いました」