比較試乗 アストン マーティンV8ヴァンテージ vs ポルシェ911(997) 前編
公開 : 2017.11.23 00:00 更新 : 2017.11.23 01:40
まるでドイツ生まれのように
テールパイプがリアパネル下部から突き出る部分の精密な面取り仕上げや、テールランプとウインドウの滑らかな面一仕上げ、ボンネットとフロントスポイラーとグリルの間の絶妙なバランス、そしてペイントの厚みと光沢について……。
なるほど、各部のフィニッシュは確かにすばらしい。だが、そのすぐ隣にはドイツ車の中でも最高の品質を誇るクルマが鎮座している。見た目の品質感はともかく、本当に重要なのは実際に触れた時に伝わってくる質感だ。
実際のわたしはおもむろにV8ヴァンテージのドアを開け、そして閉めてみたが、果たしてそれはまるでシュトゥットガルト流の重厚な音と手応えであった。
このクルマのルックスは素晴らしく、コンパクトにまとまっていて、姿勢は美しくわずかに前傾している。見るからにドライビング・マシンといった趣であり、贅肉はまるでない。
わたしはこのクルマがまだコンセプトカーだった時分に始めて出会ったときの印象を想い起こした。
それはアストンの最廉価モデルであるはずなのに、エントリーモデルとは思えない存在感を放つクルマだったが、いま目の前にいるV8ヴァンテージも寸分違わぬ印象を与えてくれる。これなら、たとえヴァンキッシュを買える財力の持ち主でも、サイズと美しい造形が気に入ってV8ヴァンテージを選ぶ可能性がおおいにある。