セアト、過去最高の業績に 若きCEOの1日に密着 見据える未来とは
公開 : 2017.12.02 18:10 更新 : 2017.12.14 12:35
2:30 PM 「誇り」と「プレミアム」は無縁だ
われわれは再び出かける。次はセアト・スポーツ。ウサギの巣穴のように整然とつながったワークショップだ。ここでは、ボディの準備はエンジンの組み立て、エグゾースト・システムなどの製作や最終整備とは別に行っている。
デ・メオはこの場所をセアト魂(誇りを持つのにプレミアムである必要はない)のるつぼだと考えており、以前アバルトで行ったのと同じように、急いでセアト・スポーツのテコ入れをしたいと考えている。
そこで昔のアバルトの同僚、アントニオ・ラバテに来てもらい、長年のチーフであるジェーム・プークの支援に加わってもらった。「アントニオは中身の濃い仕事をしてくれました」とデ・メオは言う。「わたしがパワーポイントとスピーチにかまけている間に……」
ここでは、レオン・サイズのコンペティション・セダンの製作に特化しており(同じ建物にはレーシング・ゴルフも置いてあった)、今までに450の最新モデルを製作した。最低でも1台平均10万ユーロ(1,330万円)することを考えると、悪くない商売だ。
3:30 PM 大きな勇気こそ大切である
次にデ・メオと車で向かったのは敷地の奥にある秘密の場所、R&D本社だ。非公開のデザイン・モデルが置いてあるメソネロ・ロマノスのデザイン・スタジオにもほど近い。
部屋に入り、ひと懐っこいマシアス・ラーベ(R&Dのボスだ)と握手するより早く、わたしは厳かな感覚にとらわれた。最繁期には2000人を数える研究員にとって、2017年はすでに遠い過去だ。彼らは2020年のずっと先を見ている。
「これからの6、7年がもっともチャレンジングな時期ですね」とラーベはいう。「全く新しいモデルを最低でも5車種、発表します。それと既存車種のモデル・チェンジ、さらにCO2削減の基準達成、加えて電動化への対応です。たくさんあります」。一瞬くじけそうになるが、彼は有能な技術者らしく落ち着いて話す。
わたしはまた頭がくらくらする。バーチャル・リアリティのヘッドセットをかぶって、もうすぐ発売されるセアトの新型モデルに座りインテリア・トリムの間を行ったり来たりする。ついで本物のインテリアに座ってアマゾン・アレクサのデモを楽しむ。若い顧客から強い要望があるそうだが、今回初めてその理由がわかった。
もう時間切れだ。空港への道路は混雑し始めている。わたしの頭はもうオーバーフローしているが、ラーベが現在の業務を要領よく数字でまとめてくれたおかげで、自動車メーカーが今後どのように進むのか、おぼろげながら理解できた。
345のプロジェクト、82種のプロトタイプ、270万時間のエンジン開発に130万kmのテスト走行だ。これからの自動車メーカーには、勤勉や才能だけでなく大きな勇気も必要だということが、今日、はっきりとわかった。
少なくとも、ルッカ・デ・メオの率いるセアトは、紛れもなくそれを持っている。