特集 「ワールド・ソーラー・チャレンジ」 壮絶な戦いに潜入
公開 : 2017.12.10 11:40
太陽光だけが頼り
アローSTF(スポーツ・ツーリング・フレームワーク)はクルーザー・クラスに属する。ふたり以上乗れるよう設計されたクルマのクラスで、実用性と速度で判定される。
より高速なチャレンジャー・クラスはひとり乗りで、レースでは最初に全速力でスタートする。
このソーラー・チャレンジには40チームが参加しており、多くが世界中の主要大学だ。各チームはクルマの開発に長い年月を費やしており、ほとんどが数千万円の費用をかけている。
アローはこのレースで最も重要な参加チームのひとつである。このオーストラリアの自動車メーカーは他に先駆けてソーラーカーを商用化したいと考えている。来年発売予定のソーラーカーの価格はおよそ148000ポンド(2235万円)である。
このレースが始まる前、オーナーのキャメロン・チュースレイはこう説明した「本質的にSTFは、われわれが市場に出したいクルマのプロトタイプなのです。これはレース仕様ですが、市販車ではエアコン、より快適なシート、それに適切なインフォテイメント・システムが装備されます」
息が苦しくなるキャビンの暑さを考えるとエアコンが最優先だといいたい。このクルマの窓はすべてはめ殺しだが、おかげでSTFはテスラ・モデルSより3倍も空力特性が良いのだ。
ソーラーカーの長距離レースとは、つまるところ、いかにエネルギーを節約するかということだ。各チームはリチウムイオン電池を10%まで充電しておいてよいが、あとはレース中の太陽光だけが頼りだ。
したがって、雲が出てくるとバッテリー・パワーは深刻なことになる。最後の手段として外部充電することも許されているが、最終成績からはその分が差し引かれる。そのため、屋根のソーラー・パネルの発電量と最適なスピードのバランスに常に気を配らなくてはならない。デジタル・ダッシュボードには、アクセルを踏み過ぎているとか、最大効率でクルージング中だとかの情報が表示される。