前編 高速グループテスト ヴェイロン vs 911GT3 RS vs ガヤルド・スーパーレジェーラ vs DB9 vs R8 回顧録

公開 : 2017.12.16 10:10

エントリーした5台のモンスター

彼の言っていることはたぶん冗談なんかではない。ヴェイロンはきっと野獣そのもののはず。だからこのクルマに乗る前に改めて心に決めた。金銭的価値について考えるのはゼッタイによそう。

でなければこのクルマのパフォーマンス全部を体験してやろうなんて気分になんかなれっこない。意を決してヴェイロンに乗り込んで街に出る。早速、いかにも雑な運転のダッジ・スプリンター・バンが近づいてきた。リアウィングすれすれまで。もう無理。1億8800万円のリアリティを無視しきれない。ふとポルシェ997GT3RSが10台並んでいる光景が見えた気がする。

500mも走ると片側2車線の自動車専用道路に合流した。ゴムを張った停止バリアが先のほうに見える。そこまでの区間を使ってスロットルペダルを2/3ほど開けてみた。それだけで僕の中の「速い」という言葉に対する感受性が完璧に変わってしまった気がする。もう以前と同じには戻れそうにない。

しばらく流してロケ地を探す。ほどなく舗装はきちんとしているのにがらがらに空いた道路を見つけたので、その起点にヴェイロンを停車させて、しかるのちにこのクルマの印象をみんなで話し合ってみたりした。

ここでの話題はふたつ。ひとつ目は、ヴェイロンの物理的占有空間は予想していたほど大きくないということ。そしてふたつ目は、ピエヒ博士が今年のアタマにアストン マーティンを自らのスーパーカー帝国に加える決断をしていたら、今回集めた5台のクルマのうちどれでも好きなのを自分専用の社用車にできていたのだということ。でも実際には彼はヴェイロンを自分用にしていない。ヴェイロンを所有しているのはピエヒ夫人のほう。

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