前編 高速グループテスト ヴェイロン vs 911GT3 RS vs ガヤルド・スーパーレジェーラ vs DB9 vs R8 回顧録
公開 : 2017.12.16 10:10
アウディR8 華麗な登場
これだけのクルマを目の前にして思うのは技術の進歩でもなんでもなくて、じつは過去10年間の世界的経済成長のほうだったりする。ブガッティは別としても、ここにあるクルマはどれも少なくない利益を生み出す商品として普通に販売されていて、しかもそれなりの規模で大量生産されているのだから。
たとえば約1400万円もするアウディR8をショールームで注文しても「2年待ちですがいかがいたしますか?」とにこやかに宣告されるわけだし、今世紀になってからのランボルギーニの生産台数成長率も驚異的だ。
1990年代には年間24台しか出荷されなかったアストン マーティンでさえ、昨年(2006年)は年産7000台を突破した。ポルシェ911の増殖ぶりにいたってはもう悪いブームだとしか思えない。ただしここにいるGT3RSはポルシェ社の売り上げにあまり貢献していないかもしれない。製造台数的に。
なにもスポーツカーが売れているからメデタイなんてことを僕はここで言いたいワケじゃない。世界はこの種のクルマへの恋から醒めなくてはいけない時期に来ているはずなのに、実際にはさらに多くのひとがこれらのクルマを買おうとしているという事実がまずひとつある。
けれどすべてのフォルクスワーゲン・ゴルフのCO2排出量が2g/km減ったとしたら、この種のスポーツカーを路上から一掃するよりはるかに効果が大きいという事実がもう一方にある。こんなことを書くと環境保護団体から格好の標的にされるかもしれないけれど。
だからこれらの物体の環境的負荷はとりあえず置いておいて、自動車工学におけるエンジニアリングとスタイリングの成果としてもっと賞賛されてもいいのではないか。現代のスポーツカーは。
それにしてもBMWがいまだに超高級クーペ市場で悪戦苦闘している一方で、ブランド力では同等に見られていないというかぶっちゃけて言ってしまえば格下に扱われることも少なくないアウディが、その世界へR8で見事に華麗にデビューしてしまったのはじつに興味深い。
とりあえずアウディR8はとても堂々としている。スタイリングに関しては賛否分かれているようだけれど、ボディサイズやスペックやサウンドは文句なくイケている。そしてどうやらこのエンジンにとってのRS4は、本命が出るまでのつなぎでしかなかったらしい。単独で出撃していくR8が針葉樹林の中から響かせるエグゾーストサウンドを聞いて、そのことに気がついた。
お次はランボの番。