中編 高速グループテスト ヴェイロン vs 911GT3 RS vs ガヤルド・スーパーレジェーラ vs DB9 vs R8 回顧録
公開 : 2017.12.16 17:10
ヴェイロン 直線だけではない
わたしがヴェイロンを初めてドライブしたのは2005年、シチリア島で開催された発表試乗会でのことだった。その当時、性能の高さと洗練の極みに呆然としたのは事実だが、ここまで全面的に圧倒された記憶はない。むしろ個性に少し欠けるようにすら思った。
しかし、ここの道はシチリアとは違ってタイトかつツイスティで、ひと言で表現するなら「楽しい」コースだ。つまりヴェイロンの持つエネルギーとキャラクター、そしてポテンシャルを炸裂させるにはもってこいのシチュエーションなのだ。5分間も走らせれば、誰でもこのクルマが「究極の創造物」であることを認めざるを得ないはずである。
もしかするとなんらかの仕様変更が実施されたのかもしれないし、単にこのようなコースとの相性がいいだけかもしれない。いずれにしてもわたしはヴェイロンの能力に完全にノックアウトされてしまった。
それはスロットルペダルを踏み込んだときにどれだけの加速Gが出るかというような単純な話ではない(実際に超人的かつ地殻変動的に速いのだが)。むしろステアリングのよさやタイトなライン取りでの身のこなし、7段DSGトランスミッションのよどみない動作、路面の状態を問わず乗り心地とハンドリングが流麗であることによるものだ。あまりにも鋭敏に回頭し、瞬時に停止するので、公称1880kgの車重表示などまるで信用できなくなってしまう。
そうはいっても最高に至福なのは、やはりストレートでスロットルペダルを全開にした瞬間だろう。そのときだけが、1001psのパワーを完全に自分の右足の制御下におくことができ、なおかつそれを実感できるからである。
ひけらかすようで申し訳ないが、わたしは2002年にル・マン優勝を果たしたアウディをドライブしたことがあるし、900psを発生するジャガーのF1マシンも経験している。そのわたしが断言する。このワインディングロードに限るなら、ヴェイロンはその両者よりも速い。少なくともわたしの感覚はそう訴えている。
信じられない?
よろしい。少しだけ説明しよう。