後編 高速グループテスト ヴェイロン vs 911GT3 RS vs ガヤルド・スーパーレジェーラ vs DB9 vs R8 回顧録

公開 : 2017.12.17 16:10

ルームミラーにヴェイロンが見えたら

R8はこれまで世界になかったタイプの、驚異的に洗練されたスーパーカーである。乗り込んだ瞬間に、すべての装置がどこにあってどう操作すべきなのかを直感的に理解できる。

驚くべき論理的センスと明瞭なデザインを備えており、そしてそれは走りにも如実に表れている。実効的意味のないギミックが不足しているために、今回のグループのなかでR8が単純で実用的にすぎるように見えたとしたら、それは現実世界における最大級の賛辞だろう。

R8は最高速度300km/hを誇る純然たるスーパーカーだ。サウンドとパフォーマンスも本物らしくよくできている(なぜなら本当に本物だから)。

しかもそれと同時に、気軽に乗り込んで数百kmの距離を一気に、DB9と同様の洗練度と快適性を味わいながら走り抜けられるクルマでもある。

運動能力やパッケージングを考えれば、この特性は驚異的と言っていい。アウディは需要に見合うだけの生産台数を確保することができずにいて、すでに2009年分まで売り切れているそうだ。それもまた驚異的な話だが、内容を考えれば不思議なことではない。

もっとも今回のクルマたちを相手にしたとしたら、少なくとも3台には一瞬で抜き去られてしまうことだろう。かろうじてDB9なら相手にできるが、R8を手に入れてスーパーレジェーラやGT3RSと張り合おうとしているなら、覚悟を決めてからのほうがいい。もちろんあっさり抜かれてしまうことへの、である。

もしもルームミラーに映ったのがヴェイロンなら、サイドウインドウを降ろして降伏の白いハンカチを振って道を譲ろう。それが屈辱的な事態を避けるための唯一の自衛策だ。

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