後編 高速グループテスト ヴェイロン vs 911GT3 RS vs ガヤルド・スーパーレジェーラ vs DB9 vs R8 回顧録
公開 : 2017.12.17 16:10
キングとの決闘
GT3RSは、R8に限りなく近いスムーズさと洗練度を持ちながらも、ストレートでのパンチははるかに強烈で、フロントタイヤの食いつきも優れている。おかげでわたしは「もしかするとアイツは追いつけないんじゃないか?」などと考え始めていた。
ヴェイロンは姿を現すやいなやミサイルのように一直線に突き進んできて、GT3RSの背後にぴったりと張り付いた。キセノンヘッドランプが放つ2本の光線が、リアウインドウ越しにわたしの後頭部を直射している。
道幅が狭まり、曲率が上がっていくにつれ、自分が運転しているのはリアにエンジンを積んだポルシェ911なのだという自覚が高まる。
公道であることを忘れかけるほどギリギリまでハードに攻め込んだ。それでもヴェイロンを視界から消し去ることはできなかった。ヤツはただそこにいて、わたしとGT3RSを観察し続けていた。
やや短いがかろうじてストレートと呼べるようなセクションにさしかかり、わたしは3速ギアで走るGT3RSのスロットルペダルを渾身の力で踏み抜いた。
その瞬間は、まるで時間が止まった世界の中でひとりだけ動き続ける者を見たようだった。ヴェイロンが前に出た。あまりにもあっさりと、こともなげに。
それがどう見えて、どう聞こえて、どう感じたのかを、わたしは決して忘れることはないだろう。以上が今回のグループテストの結末である。さて、プレーヤーにDVDを入れ、反省会でもすることにしよう。