アルピナB3ビターボ 当時の試乗記、評価は? M3/C63の話も 回顧録
公開 : 2017.12.17 10:10 更新 : 2017.12.18 11:05
なめらかな乗り心地のキー
なめらかな乗り心地のキーとなっているのはタイヤだ。サスペンションのセッティングが意外に硬くない(335iとさほど変わらない)のも理由のひとつだが、19インチの専用ミシュラン・パイロットスポーツが最大要因だろう。
このタイヤはアルピナが要求するスペックに合わせてB3/D3のためだけに作られたもので、当然、ランフラットではない。その結果、B3はひどい段差以外なら滑るように駆け抜ける。相対的に新型M3は洗練度に欠けたクルマに感じられることになる。
もちろんトレードオフもある。B3は持つ能力の9割以上のペースで走らせたとき、少々ソフトすぎると感じる局面があるのだ。特にハイスピード走行時に、路面のうねりによって少しクルマがフワつくのはいただけない。
そんなときには思わず「あとほんの少しだけサスペンションが締まっていれば、この素晴らしいパワートレインがさらに光り輝くのではないか」と想像してしまう。
とは言え、カントリーロードを何往復かハードに走らせているうちに、ほとんどの人はそれも些細な欠点としか感じなくなるだろう。それどころかこの欠点に気づかないオーナーも少なくないのではないか。
そう考えると、限定的状況における不満など取るに足らないもので、素晴らしい洗練度のほうがはるかに意味のある要件だと思えてくる。
商業的に言えば、M3にとってB3は歯牙にもかけない存在であり、ライバルとは見なされないだろう。両者の販売台数はあまりにも違いすぎる。
だが、ダイナミクス性能の見地からは、BMW自身の手によるハイパフォーマンス・バージョンを選ばない(最大ではないにしても)理由のひとつになる可能性がある。M3ほどシャープでも鮮烈でもないとしても、日常の足としての用も果たしうるロードカーとしては、もしかしたらB3のほうがベターなチョイスかもしれない。