アルピナB3ビターボ 当時の試乗記、評価は? M3/C63の話も 回顧録

公開 : 2017.12.17 10:10  更新 : 2017.12.18 11:05

番外編 ライバルといえば……

メルセデスのAMGモデルといえばハイパワーが売りで、繊細さとは無縁のクルマであるように思われている。だが新型C63はそんなイメージを覆すことになると、開発部門の新任ディレクター、トビアス・メールスは言う。このAMGのフィロソフィーの変化をなによりも明確に示しているのが、C63に「解除可能な」ESPシステムを装備するという決断である。

「わたしが開発当初からこのクルマへの採用を働きかけていたものです。クルマのパフォーマンスを余すところなくフルに使える選択肢を用意するのは、われわれの顧客にとってとても重要なことです」とメールスは語る。それがなにか決定的な違いを生むのだろうか。答えはもちろんイエスである。

わたしは初代190E 2.5エボリューションほど楽しくて完璧なダイナミクス能力を持ったメルセデスを知らない。

最近のAMGモデルがすべてそうであるようにC63も自然吸気の6.2ℓV8(463ps)を搭載するが、エンジンの搭載位置はノーマルのCクラスよりも15mm後方にずらされている。AMGの努力はそれだけにとどまらない。

メールスによれば、C63はこれまででもっともハード指向のモデルであり、特別なシャシー・セットアップが施されているという。また、C63は新型CLK63ブラック・シリーズと同じフロントアクスルを採用し、フロントエンドの剛性が高まった結果、より鋭いターンインとより豊富なフィードバックが得られる。

さらにC63はアグレッシブなルックスのボディをまとい、視覚的にも強烈なアピールを放つ。室内にはAMGのお馴染みの装飾──独特の形状のステアリング、シフトパドル(7G-TRONIC用)、新しい意匠のメーター(速度計は320km/h以上まで刻まれる)、現在のギア段数を表示するデジタル・ディスプレイ、そしておそらくはセンターコンソールにESPのボタンが備わる。

スロットルペダルを踏み込めば、衝撃的な加速が待っているはずだ。しかも今回は単なるパワーだけでなく、運動神経も伴っている。素晴らしいレスポンスとコミュニケーション、アジャスタビリティを備えたシャシーである。ステアリングの重みはまずまずで、インフォメーションは豊富。スタビリティも高く、自信を持ってハイスピードでコーナリングできる。乗り心地にまったく不満はなく、信じられないほど見事にコントロールされている。

フロントエンドのダンピングも絶妙で、バンプを乗り越えても挙動を乱されることはない。

C63は年内には日本に上陸し、1100万円前後で販売されると目される。旧モデルよりはずいぶん高くなるが、内容を考えればお買い得だ。新型M3よ、ご用心あれ。

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