メリークリスマス! アストン マーティンDB11とゆく、ツリーをめぐる冒険

公開 : 2017.12.25 17:10  更新 : 2017.12.27 11:35

いよいよエンディング

気分転換を兼ねてノース・ヨーク・ムーアズ国立公園へと向かったが、あまりにアップダウンが激しく、引き返すことにした。

その後は宿があるハンバー川の河口まで走った。明日には森の女王との対面が待ち受けている。

翌朝、話しを伺ったDFDSシーウェイズという船会社の取締役であるショーン・ポッターによると、まず彼の会社がノルウェーからイミンガム港の同社の0.6平方kmのコンテナ・ヤードまで船で木を運び、そこから提携する物流会社のベック・アンド・ポリッツアーがロンドンのトラファルガー広場まで輸送するそうだ。たった1本の木のためにこんなにも大掛かりなことが行われているのだ。

お隣の国、スウエーデン発祥のイケアが得意とするコンパクト梱包と現地組立の方式に負けじとばかり、ノルウェー人も配送のしやすさを追求して木の下の方の枝を一旦切り取り、ロンドン到着後、穴を開けておいた箇所に再びその枝をはめ込むようにしている。

埠頭では、21mの高さの木がクレーンでゆっくりとつり上げられて、木と特注の木製受台の長さに合うよう調整された伸縮トレーラーに載せられているところだ。次の大型船が波止場に近づく頃、木は無事に固定されてトレーラーは素早く走り去った。

われわれはサメの後を追いかけるパイロット・フィッシュのように一緒に出発して家路についた。道中はアストンに松という物珍しい組み合わせ見たさに多くのクルマが近寄ってきて手を振ってくれたし、ガソリン・スタンドでは色々言われた。

「どうでもいいけど、アストンにクリスマスツリーをくくりつけるなんて」とか「なにやってんだ」とか。一番おもしろかったのは、マジック・ツリーという消臭剤のコピー品を買う時に警戒心の強そうなレジの店員に「よっぽどクリスマスツリーが好きなんだね」と皮肉っぽく言われたことだ。

AUTOCARのオフィスに着く頃には夕方になっていた。ロバートは少し後ろにずれていたが、ストラップを解くと枝がぱっと誇らし気に広がり、砂利道や嵐や渋滞などをくぐり抜けて1207km以上の総走行距離を経てもなお、快い木の香りを放っていた。誰かに飾り付けてもらえることを願いつつ、オフィスで最も目立つ場所に彼を置くことにした。

彼はわれわれの長旅によく付き合ってくれたと思う。アストンも、冬タイヤを履いていないのによく頑張ってくれた。カリスマ的で快適で、速くて楽しいクルマだということがわかった。

そして、クリスマスツリーの下にフィットすることを証明できたわけだから、サンタさんよろしく! と声を大にして言いたい。

メリークリスマス!

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