スロットカー60年の進化 大人も楽しめる理由は スケーレックストリック社訪問

公開 : 2018.02.04 19:10


流転の歴史の生き証人と対戦

話は前後するが、ラインズ・ブラザーズは72年に倒産し、スロットカーを含む模型部門はDCM社に買収される。しかし、80年にはDCMも倒産し、翌年に独立会社のホーンビィ・ホビースとして再出発を期することとなった。

この社名のルーツは、1901年に玩具メーカーを立ち上げたフランク・ホーンビィにまで遡ることができる。ピーク時にはおよそ2000人が働いていたマーゲイト工場は、90年代末に生産の場が中国へ移り始めると、流通センターとして存続することになった。

それも2014年、ホーンビィ本社がケント州サンドウィッチへ移転するのに伴いカンタベリーへ移り、海沿いに佇むマーゲイトの社屋は現在のビジターセンターへ姿を変えたのである。

ビジターセンターのスタッフは7人だが、そのうちのひとりであるピーター・オリバーは、ホーンビィに50年勤める大ベテラン。67年に入社しカスタマーサービスを担当した後、70年代には取扱説明書やパーツリストなどを手掛ける印刷室の立ち上げに携わった。

筆者はブキャナンとともに、現在はビジターセンターのガイドを務める81歳の大先輩にスケーレックストリックでのレースを挑んだのだが、もっと慎重になるべきだった。オリバーのマクラーレンP1は、われわれふたりを歯牙にもかけなかったのである。

言い訳するなら、デジタル仕様のスケーレックストリックを扱うのは初めてだった。それは2車線で最大6台までの同時走行を可能にするというものだ。ブリキからプラスティックへの移行、はたまたマグネット式デバイスの導入と同じく、デジタル技術の導入はこの息の長いホビー玩具における巧みな発展に数えられる。

もうひとつ見逃せないのが、レースコントロール・アプリ(ARC)だ。これはBluetooth接続が可能なコントロールユニットにより、レースのタイプや距離、ラップタイムの記録、ピットインのタイミングの設定などが行える。

レースのリザルトはSNSでシェアすることもでき、手に取れるおもちゃでありながら、オンラインの世界でも楽しみやすいように考えられている。

ただし、テクノロジーがいくら進化しても、オリバーに勝てるかどうかはまた別の話。そちらは修行あるのみだ。

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