最速ワゴン決定戦 BMW 5ツーリング vs アウディRS6アバント 前編
公開 : 2018.01.28 09:10
トルク命のロケットワゴン
でもちょっと待てよ。この2台ってワゴンだよ。改めていうけど。大声で。ワゴン! ……かあ? 実をいうと、90年代初期の時点でもう状況は変わっちゃっていた。
「エステートカーはマイホームっぽい」なんてイメージは、アウディがポルシェのお腹をコチョコチョやったときから、つまりRS2を出したときにからずっと、いわばドイツ軍によってハイジャックされたままになっちゃっている。
速いセダンや速いクーペは、比較的取り締まりの対象になりやすい。世間という風紀委員による。でも、速いワゴンはそれらよりも指弾されにくい。つまり、自動車メーカーにとってワゴンの姿は便利な隠れ蓑ってわけだ。
あるいはシールド。防御壁。今回借りたみたいなおバカ路線のアウディは、つまりはそういう事情から世に出てきた。AMGも、同じテを使っていくつかのモデルを出している。そうなると、BMWがやりたくなるのも無理はない。でM5のワゴン。
今回の比較試乗をするにあたって、キモはとにかくトルク関係の話題だと思う。普段フツーにクルマが走ってるときお世話になってるのはパワーというよりはむしろトルクで、したがってRS6の最大トルクがM5のそれより13.2kg-mだけデカいという事実は注目に値する。
あと、RS6の最大トルク=66.2kg-mが1500rpmから6250rpmにわたる広い範囲において発揮されるということも。
トルクコンバーターが滑るから1000rpmになるまでクルマは動き出さないし、7000rpmを過ぎたらギアボックスはその瞬間シフトアップしてしまう。そういうことはあるにせよ、最大トルクはエンジンの回転域全体のうちの79%を占める領域のどこにおいても引き出すことができる。
バカらしいまでに重たい車重──このことについてはすぐ後ろで触れますのでヨロシク──すらもなんのその。V10ツインターボの筋力たるやトンでもないものがある。
RS6のドライバーなら、M5のドライバーがエンジンを6100rpmまでブチ回して全負荷にしてやっと引き出すことのできるトルクよりも強いトルク──ほとんど14kg-m増し──をそれこそ毎朝家の敷地から公道へ出る前に指令一発バクハツさせることができる。やろうと思えば。例えばの話。
となると、これはもうホメないわけにはいかない。決めないわけにはいかない。パフォーマンスの格差。