マイクロカー「ピールP50」に試乗 独特の世界観、理由はどこに?
公開 : 2018.01.20 10:10 更新 : 2018.01.20 10:51
4.9psの幸福製造マシン
30km/hを超えると、スタビリティが問題になってくる。そのため、事実上の最高速度はこのあたりだ。カメラマンのクルマに続いてシュロップシャーのA級道路に入ると、突如として大型船の航路を横切る小魚になったような気分に襲われた。
振動も音も、そこに集まるクルマたちが100kg未満ではなく2トン級であることをほのめかすもので、並走車たちが投げかけてくる影は日食を思わせる。
前を行くカメラマンのクルマが思いがけぬ方向転換をするので、急ブレーキを踏む。めったにない機会なのでさらに強く踏み込むと、ついにP50は止まった。32km/hからのフルブレーキングはキャリアハイ、の反対で、取るに足らないものだった。
辿り着いたブリッジノースの市街地では、P50が本領を発揮する。交通の流れに遅れることなく、車止めポールに迫りすぎることもない。人が余裕をもって歩ける道ならば、P50も通ることができる。
混んだ街並みを行く人々と同じ速度で走れて、中心街をぶらつくのがこの上なく楽しかったので、馬鹿みたいに頬が緩んでいた。ひとびとは手を振ってくれるし、駐車するとちょっとした人だかりができたものだ。
P50がどんなクルマか詳しいひとは少ないが、その姿や、60年代の気風を感じさせるものだということは多くが知っている。ノスタルジーと、フレンドリーでちっぽけなサイズを合わせて考えれば、これは究極の愛すべきクルマだ。1万5000ポンドのスクーターではない。4.9psの幸福製造マシンなのだ。