「漆黒への回帰」 マクラーレンP1、デビューから5年 いま乗ると?
公開 : 2018.02.03 11:40
ラ フェラーリと戦うために
P1の設計責任者でもあったパリー・ウィリアムズはこう振り返る。
「2009年に正式にプロジェクトを立ち上げたとき、ハイブリッドの可能性について『これではクルマが速くどころか遅くなるだろうから意味がない。検討に値しないだろう』と思いました。その後ハイブリッドへの世間の関心が高まって、ポルシェ918スパイダーがとても早い時期に発表されたこともあって、あらためて検討してみることにしました」
技術集団というマクラーレンのキーワードからすれば、引き下がる余地はなかった。
フェラーリがラ フェラーリなる超弩級スーパーカーで向かってくることもわかっていたが、マクラーレンには太刀打ちできるエンジンがなかった。こうしてP1のハイブリッドへのレールは引かれた。
パリー・ウィリアムズは続ける。
「当時、われわれはF1でメルセデス・ベンツと仕事をしていたので、(メルセデスのF1エンジン工場のある)ブリックスワースの人間とはとても親しい関係にありました。彼らの元を訪れて話しましたが、クルマを遅くせずにコストに見合うだけの馬力荷重比を与えられるサプライ・チェーンはもちろんありませんでした」
「当時、トヨタ・プリウスのモーター出力が1.4kW/kgでした。F1カーのモーターの開発を1年間進めたら15kW/kgになったので、これはまだまだ伸び代がある。けれども、産業界で使われているハイブリッドの部品は未成熟だったので、自社で開発するしかないだろうと考えました」
「結局エンジンも、電力系も、バッテリーもすべて自製することになったのです……」