ロードテスト(10) BMW X3 ★★★★★★★★☆☆

公開 : 2018.02.04 11:40

 

はじめに ▶ 意匠と技術 ▶ 内装 ▶ 使い勝手 ▶ 乗り味 ▶ 購入と維持 ▶ スペック ▶ 結論

走り ★★★★★★★★☆☆

20dのエンジンは、先代5シリーズでお目見えしたB47型。SUVのスイートスポットにハマるところもあるユニットではあるが、パーフェクトとまではいかない。クロスレシオで頻繁に変速する8段ATとの組み合わせでは、負荷をかけると非常に洗練されたフィールで、扱いやすいトルク特性で、たいていの場合はリラックスして控えめな加速をたやすく行える。言うなれば、従順なユニットだ。

では、楽しいか?と問われれば、十分ではない。40.8kg-mのピークトルクは1750〜2500rpmで発生するが、エンジンを回しても8段ATがしきりにシフトアップして、積極的にその回転域へ引き戻そうとするのだ。マニュアルモードにしても、せいぜい4800rpmくらいまでしか回らず、5500rpmのレッドラインまでは届かない。可変ジオメトリーターボを使用しているにもかかわらず、回転を上げると燃費効率がガクンと低下することを示唆しているともいえる。ターゲットユーザーの多数派に配慮し、実用に徹したエンジンなのだ。

スペック表上のトルク値では、Q5の2.0TDIに肩を並べるが、ステルヴィオの2.2ディーゼルが発する48.0kg-mには及ばない。同等の条件で計測したロードテストのデータを見る限り、ステルヴィオの方がだいぶ速く、0-97km/hは6.8秒と、X3とQ5の8.3秒を引き離している。

とはいえ、0-97km/hだけでなく0-161km/hや0-400mを見ても、Q5と僅差で、ジャガーFペースの2.0ℓディーゼルには水をあけているX3が遅いとはいえない。四輪駆動にほどほどのパワー、路面の継ぎ当てとの豊かなコンタクトにより、試乗車のトラクションは、多少滑りやすい路面であっても何ら問題はなかった。

ツーリングでの燃費の計測値は、X3が17.3km/ℓ、ステルヴィオが17.6km/ℓ。X3とステルヴィオのウェイト差は大人1名分ほどで、それが差にもつながっていると思われる。それでも航続距離は1000kmを超えるのだから、まず不平の声は出ないだろう。また、Cd=0.29というクラストップレベルの空力性能と、フロントに標準、前席左右にオプションで設定される遮音ガラスにより、風切り音は極めて小さい。

テストコース

X3のハンドリングは、飛ばしてみると高い期待に概ね応えてくれた。このクラスのアベレージより、方向転換のレスポンスは機敏で、ボディコントロールには緊張感がある。グリップも強力で、ハードなコーナリングで車体が傾いても、前後アクスル間のバランスは適正に保たれる。走り重視のドライバーなら選んで当然のクルマに思えるが、典型的なSUVに期待される快適性や静粛性も併せ持っている。

アルファロメオ・ステルヴィオやポルシェ・マカンは、ハンドリングがずっとダイナミックに感じられる。だが、それは言い換えるなら、どちらもバランスや洗練性、円熟味がBMWより足りないということになる。

X3は、電子制御スタビリティ/トラクション・コントロールのオン/オフにかかわらず、スタビリティに優れる。オンにしたままモードをそれぞれスポーツ・プラスとトラクションに入れれば、システムは必要以上に介入しない。しかし、すべてオフにしても、伝統的な後輪駆動BMWらしい、スロットルによるハンドリングのアジャスト性は期待しない方がいい。

不安定な走りが予測されるT3の逆バンクでさえ、シャシーがバタつくことはない。

強固なハンドリングバランスは、トルクベクタリングが効果的なこともあり、T2のようにタイトなコーナーでもいち早くスロットルを開けられる。

発進加速

テストトラック条件:湿潤路面/気温9℃
0-402m発進加速:16.5秒(到達速度:134.2km/h)
0-1000m発進加速:30.5秒(到達速度:168.5km/h)

アウディQ5 2.0TDI 190 クワトロ Sトロニック
テストトラック条件:湿潤路面/気温5℃
0-402m発進加速:16.5秒(到達速度:136.2km/h)
0-1000m発進加速:30.3秒(到達速度:167.0km/h)

制動距離

テスト条件:湿潤路面/気温9℃
97-0km/h制動時間:3.35秒

アウディQ5 2.0TDI 190 クワトロ Sトロニック
テスト条件:湿潤路面/気温5℃

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