ホンダ・シビック・タイプR vs アバルト124スパイダー 比較テスト
公開 : 2018.01.30 16:10
ようやく真価を取り戻した赤バッジ
この対決の興味深いポイントは、勝負するまでもなく、それぞれが相手を凌いでいる点がハッキリしていることだ。
シビックはデタラメなくらいに速く、FFハッチとしては驚愕のハンドリングを持ち、それでいて5人分のシートと広い荷室も備える。
世間一般の価値観に照らせば、間違いなくこちらの方がいいクルマ、ということになるのだろう。
ただし、純粋なドライビング・プレジャーを論じる場はスペック表の上ではなく、当然ながら路上だ。
前輪駆動レイアウトは根本的に、走りを論じるにはふさわしくないアンバランスな構造で、またベース車は買い物や子どもの送り迎えを主目的にしたクルマである。
アバルトのような後輪駆動で軽量な2座ロードスターに、はたして太刀打ちできるのか。普通に考えれば、勝ち目などないように思える。
集合地点までの足はシビックだったが、その道中、このクルマにおけるホンダの仕事ぶりに舌を巻きつつ、どうしてこれまで、タイプR本来の輝きを再び見つけ出すのにこうも手間取ったのかと疑問も感じた。
この新型タイプRに限れば、古き佳きカーキチ集団であり、F1を制した唯一の日本車メーカーでもあるホンダにしか生み出し得ないだろうものとなっている。
数あるハッチバックの中でも、フォルクスワーゲン・ゴルフRと同様の巧みな走りをみせるが、あちらがその高性能ぶりに口を閉じるのも忘れるほど唖然とするばかりのクルマであるならば、こちらは口角が耳まで届くほどニンマリしてしまうようなシロモノだ。
思わず笑顔がこぼれるようなグリップと、ある程度のコントロールを許容するリアタイヤ、そして今買えるこの手のいかなるクルマにも劣らない精度を持ち合わせている。