ホンダ・シビック・タイプR vs アバルト124スパイダー 比較テスト
公開 : 2018.01.30 16:10
秀才と天才
シビックは対照的に、走り出しから楽しめる。直線路でつま先にちょっと力を込めるだけで、それは始まるのだ。
0-100km/hのタイムは5.8秒で、アバルトをきっかり1秒置き去りにする。FFレイアウトのトラクション面での制約を受けてさえこれなのだから、このホンダユニットをアバルトのシャシーに組み合わせたなら、5秒台前半まで短縮できるだろう。それどころか、パフォーマンスが別次元へと高められるに違いない。
しかし、走り続けると思わぬ状況になってくる。
アバルトでタイプRについていこうとしても、ペースが上がると無理だということを思い知らされるが、これは想定内で、しかもたいして気にならない。
ただただ先行車の背中を追う走りから、本気のドライビングへと切り替えた途端、この小さなフィアットは表情を一変させるのだ。
突如として、シャープで鋭敏に感じられるようになる。エンジンには欠点もあるが、そこに低速トルク不足は含まれない。そして、シャシーは注ぎ込まれるエネルギー量が増すほどに、活き活きとしたフィールが高まっていく。
シビックがいかに望んでも、124スパイダーに敵わないものもある。全幅の差は驚くべきことに142mmもあり、シビックなら通るだけで精一杯のタイトなコーナーでも、適正ラインを通すことができる。
いかに走らせようとノーズがアペックスを捉えてくれるのは、シャシーのセッティングを手掛けた開発者たちに、この手のクルマにアンダーステアは不要だという認識があったからだろう。
そうしてこのアバルトは、挙動をエンドレスに後輪でアジャストできる素質を持ったものとなった。LSDを標準装備することもあり、必要以上に派手なドリフトをかますこともできる。
だが、それ以上に満足感を得られるのは、舵角をほぼつけずにニュートラルを保ち、外輪に送り込むパワーで進行方向をコントロールするときだ。
グリップが比較的穏やかなので、速度も比較的控えめならば、そうした操作もやりやすい。