北極圏の凍結路「アイスロード」 オイル・ブーム時から一転、絶滅も? AMG GLE43で走ってみた
公開 : 2018.02.03 21:10
何もかも凍ってしまう
GLE43に乗りこんだ時には、ワイパーのゴムは凍り、ブレーキ・キャリパーは硬く凍結していた。そのために、これからの任務にあたって、エンジン、ギアボックスとブレーキフルードが十分に温まっているのが確認できるまでアイドリングを続ける必要があったほどだ。
この旅は、撮影車のGLE400と、万一の事態に備えた救援車両としてG500を伴ったコンボイで行くことになる。この3台のメルセデスはホテルの駐車場に停まっている大柄なピックアップ・トラックの中でも目立つ存在だ。
早めの朝食を食べながら、地元のひとたちが話を聞かせてくれた。どうやらイヌヴィックに住むひとびとにはそれぞれが語るべきアイスロードでの体験談があるようだ。
元石油採掘の作業員だったジャックは、かつて自分が働いていたインペリアル・オイルのプラントへの通勤途中に、町から32kmの地点で乗っていたシボレー・インパラが故障したときのことを話してくれた。現在68歳のジャックは、助けがくるまでに凍え死にそうになったという。
「エンジンルームの燃料配管が凍結して割れてしまい、夜中に立ち往生するハメになったんです。もう少しで凍傷になるところだったんですが、無線のお陰で何とか助かることができました」。携帯は電波状況が悪いため、ここではトランシーバーがドライバーの必需品だという。
アイスロードのスタート地点へと続くイヌヴィックの雪に覆われた道をザクザクいわせながら歩いて行くと、遊泳注意の看板に気が付いた。たった人口3000人の町だが、この看板が夏の間に町がどれほどの賑わいを見せるのかを思いださせてくれる。マッケンジー川のリバーデルタが雪解け水で満たされると、地元の航空会社が冒険を求める南からのツーリストたちをひっきりなしにこの町へと運んでくるのだ。それほど簡単に辿り着ける場所では無いにもかかわらず。
われわれはイヌヴィックへ着くまでに5回も飛行機に乗る必要があった。