メルセデス・ベンツSL63 AMG vs ジャガーXKRコンバーチブル 回顧録
公開 : 2018.02.08 10:10
ますます高まるXKRの好感度
高速巡航では、よりしなやかな足まわりを持つXKRがいきいきとしてくる。運転席のスペースはSL63とほとんど変わず、どちらも決して広くはないが、XKRのほうがキャビンのアーキテクチャーにより親密感があり、ロングツーリングでは指先ひとつで済む各種操作が心地いい。
XKRのコクピットはシンプルで、ハイテク装備満載のSL63に比べると質素だという見方もできるが、この控えめで上品な仕立てを好む人も多い。詰まるところ、わたしはXKRのキャビンのほうに魅力を感じた。それに、ルックスだって悪くない。今回の旅では常にXKRのほうに人びとの熱い視線が注がれた。
それに対してSL AMGは目立たない。ショッピングモールに停めても、まるでシボレーに乗っているときほどの関心しか集めなられなかった。メルセデスがSLを世界のどこよりもたくさん売っているのが北米であり、パームスプリングスからロスにかけて広がる裕福なリタイア組たちのコミュニティでは、メルセデスのコンバーチブルはラルフ・ローレンのポロシャツと同様に彼らの制服のようなものに違いない。だが、それが問題かといえば、答はノーだ。
テストを終えて空港に向かうフリーウェイで、わたしはふと思った。大型で重いコンバーチブルにまっとうなスポーツカーとしての能力を求めるのは、クルマにとってもっとも困難なタスクのひとつではないだろうかと。コンバーチブルの宿命として、ボディからルーフを取り去れば剛性が著しく失われ、それを取り戻すために補強を加えれば大幅な重量増が避けられない。それなのに人びとは、そのクルマに対してハードに走らせたときにも威厳を失わないよう求めているのだ。