BMW135iクーペ vs ポルシェ・ケイマン vs 日産フェアレディZ 回顧録
公開 : 2018.02.07 17:40
考えるな、感じろ
それでは135iに死角はないのだろうか。
確かにこのクルマはほかの2台のどちらよりも速くて洗練されている。広くて安くて乗降性もよく、長旅でも快適だ。そして常にレッドゾーンぎりぎりまで回しているのでもない限り、経済性もおそらく優っているだろう。
しかし135iのレパートリーには、特に注目を浴びる分野というものがない。これがほかの2台、特にポルシェであれば、出るや否やスポットライトを浴びることができる舞台がはっきりしている。そう、古くからあるが漠然としていて定義のむずかしい『フィール』と呼ばれているあの舞台である。
135iにもそれが多少は備わっているが、十分とは言えない。対してZは多すぎると言っていいくらい豊富だ。そしてケイマンにいたっては、なんというかちょっと次元が違う。どこか別のところに行ってしまっている。一段上のほうで操縦しているというか、BMWに乗っていたら一生体験することがないような感覚のなかで運転できるのだ。
ステアリングだけを考えるなら、それだけでなにも考えずにディーラーに突撃する気になってしまうほどケイマンは素晴らしい。あまりにもコミュニケーションが詳細で、あまりにも入力に対する反応が純粋なので、135iのステアリングフィールがダルで、なくても予想で補える程度のものに思えてしまう。また、Zも、単体で考えるならかなり魅力的なステアリングなのだが、ケイマンと比べると鈍くてデッドに感じられてしまう。
ケイマンはシャシーもまた極上である。速いコーナーの半ばから加速していくときの、見事に均衡の取れた姿勢。ターンインのスピードと正確さ。脱出時のトラクション。公道上のどこでも変わらないがっちりしたグリップ。それらのフィールは筆舌に尽くし難い。加えて連続したコーナーを舞うようにスムーズに走り抜ける優雅さや、路面と完璧に呼吸を合わせて尻の下でなにが起こっているのかを的確に教えてくれる伝達能力、ステアリングのリムからだけでなくシートやペダルからも伝わってくる情報さえ、独特で充実している。