長期テスト アストン マーティン・ヴァンキッシュS(1)
公開 : 2018.02.06 18:45 更新 : 2018.02.07 16:14
ヴァンキッシュS 走りの第一印象
いざ乗ってみると愉快。華々しい。素敵。DB11とは違い「ソフトスタート」設定はないので、始動するや排気の轟音が響き渡るが、これもヴァンキッシュSになったことで単なるGTよりもスーパーGTのように感じられるところ。エンジンは始終うなりを上げている。その上ステアリングの「S」ボタンを押せばさらにオマケも付く。
動きだしても気の利いたところばかりだ。
8段のATは、ステアリングコラムに付いたゆるい手応えのパドルを両方とも引くと手動変速モードに入り、右側パドルを引き続けると自動に戻る、理想的なアルゴリズムだ。
エンジンはV12の中でも最上の、クリームのようななめらかさを誇る。V12には完全バランスをもたらす慣性モーメントというものがあるのだなとかつては理解していたが実はそれだけでなく、排気音を少し大きくしてやると顕わになる、それこそオーバーレブさせてしまわんばかりの夢のような陶酔も持ち合わせているのだ。
乗り心地は硬めで落ち着き、路面にもよく追従する。理想的なスーパーGTでありながら、普段乗りにも使える。ダンパーは固めに設定を変えることもできるが公道では必要ないし、それはイギリスの道でも変わりはない。
油圧のパワーステアリングは重さもギア比も完璧で、路面の感覚を的確に伝えてくれる。免許の心配が要らないスピードで分別を持ってドライブしても、ヴァンキッシュはひたすら安楽でありながら運転に熱中させてくれる。
ここ数年で最高だったと思えるドライブをもう何度も、このクルマで体験した。バング&オルフセンのオーディオのボリュームを上げ、高らかに排気音を響かせ、変速をパドルで支配し……。あまりに性急に貪らないようにしたいが、それほど虜にするクルマなのだ。