フォードGTが生まれる場所 カナダ「マルチマティック」を訪問
公開 : 2018.02.18 11:40
フォードGT 間近で目にすると
両方ともFIA公認のロールケージを備えたカーボンファイバー製タブを採用し(レースカーにはキャビン内への追加ブレースとドア補強が施される)、ボディパネルもカーボンファイバー製である。レースカーには大型スカートとスポイラー、さらには非常時のドライバー脱出用開口部がルーフに設けられているが、両モデルに共通する特徴は明らかだ。
どちらのモデルでも、車体中心に配置された乗員用スペースのカーボンファイバー製タブに、ダブルウィッシュボーン式フロントサスペンションを支持する超軽量で小型の、毎回鋳型を作り直す必要があるためにコストが掛かっていることから、社内では「インベストメント・キャスティング」と呼ばれている部品が取付く。
タブのリア側にはスチール製「Z-フレーム」(素材にスチールが選択されたのは、3.5ℓV6ツインターボが発する熱に対する耐性が最も優れているからだ)が設置される。
そして、Z-フレームにもリアのダブルウィッシュボーン式サスペンションを支持するための「インベストメント・キャスティング」が取付けられる。つまり、ロードゴーイングモデルのフォードGTとは、コンペティションモデルを公道向けに洗練させただけのクルマだということだ。
路上におけるロードカーの乗り心地を確保するため、サスペンションにはトーションバーにコイルスプリングを組み合わせた独創的なシステムが採用されている。トラック・モードでは、コイルは油圧によって固められ、スプリングレートが大幅に強化される。
同時にマルチマティック社自社製のダンパーも、強化されたスプリングに合わせて減衰力が高められ、ビルトイン式車高調整システムによってGTの最低地上高は120mmから70mmへと変更される。ホルトによれば、トラック・モードでのGTは「かなり強烈になる」そうだ。
全てのGTには油圧式パワーステアリングが採用されるが、油圧ポンプを動かすのは通常のエンジンからの駆動ではなく電動モーターである。
「将来的には間違いなく電動パワーステアリングが採用されることになります。しかし、油圧と同じレベルまで電動式を仕上げるには2年はかかると思います。われわれが信頼するドライバーの評価では、現行システムも満足いく出来とのことですが、これは特注のステアリング・ラックのお陰です。ほかに使えるものが無かったので、新たに作ることにしたのです」とホルトは言う。