回顧録 ロータス2イレブン vs アリエル・アトム300 vs エルフィンMS8クラブマン vs ケーターハムR400 vs ブルック・ダブルR 前編

公開 : 2018.02.18 11:20  更新 : 2018.02.18 20:08


ロータスとの対話

この5台にとって理想的な道は、公道ではなくサーキットだという意見はもっともである。しかし、われわれは今回のグループテストの舞台をサーキットにしようとは思わなかった。それよりも18時間走り続けて可能な限り遠くまで行き、あらゆる種類の道路を走らせてみたかった。そうやって『もっともサーキット向きの1台』を決めることにしたのだ。最終的なウィナーは、この年の『ベスト・ドライバーズカー・コンテスト』に、このカテゴリーのクルマを代表して出場することになる。

私は4台と落ち合う約束をした、M4号線を終点まで走って北西にしばらく行ったところまで行く道中で、ロータス2イレブンと互いにさまざまな感情のやりとりをした、実は乗り始めてから暫くのあいだは私はこのクルマのことをまるで好きになれなかった。2イレブンも私を拒んでいたに違いない。  

午前5時、ブライトンのあたりでは雨がパラパラと降り、霧がかかっていた。そんな状況にあって、ロータス2イレブンは理想的な旅の相棒とはほど遠い存在である。まず前方がよく見えない。いや、クルマの視界自体が悪いわけではない。このクルマを運転するには必須のフルフェイス・ヘルメットの着色バイザーが視界を悪化させていたのだ。クリアタイプのバイザーを用意するべきだったと後悔したが、後の祭りである。  

とにかく寒い。ヒーターがないので、私は9月だというのに2輪用の防寒ズボンを履き、上には厚い防水コートを着ている。さらに騒音も酷い。高さ5cmほどしかないエアロスクリーンをかすめてヘルメットを叩き付ける風の音が、ほかの音がほとんど聞こえないくらいに騒々しいのだ。  

そんな過酷な環境に身体をさらしているときの人間の心の作用とは実に不思議なものだ。苦痛が少しでも和らいでくると、そこに喜びを見いだせる。陽が昇り始めてバイザーに雨粒が当たらなくなると、私はとても晴れ晴れとした気持ちになった。あれほど騒がしかった風の音がほとんど気にならない。そしてなによりも、このクルマのドライビングの本質に大いなる歓びを見いだせるようになった。

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