2018年型トヨタ・ランドクルーザー2.8ℓ直4ディーゼル 英国内試乗
公開 : 2018.03.23 11:50 更新 : 2021.01.28 18:18
突出した走破性 「遅い」覆す
そして路上へ走り出すと、トラックやバンを思わせた前のモデルよりも確かに滑らかで洗練されたSUVになった感じがする。乗り心地改善のために行われた変更点は次のとおりだ。
・前後ダンパーの容量アップ
・サスペンションアーム補強
・ブッシュ構造の見直し
・ホイールストローク延長(特にリア)
効果はてきめんで、低速でも高速でも動きはしなやかだ。凹凸の多い路面では揺れがすぐには収まらないが、優しくゆったりとした動きだから特に気にするほどでもない。
ハンドリングとボディの挙動については、21インチホイールを履いて低く構えた21世紀の高級スポーツSUVとは違って、昔ながらのSUVを思いださせるものだ。
実際は、遅いギア比の油圧パワーステアリングとよくできたスタビリティコントロールのおかげで、安定性は十分に確保されている。それでも、路上のマナーに的を絞ったライバルと同じノリでコーナーに入ってしまうとロールは倍くらいに感じるだろうし、半分くらいしか踏んばってくれないと思うかもしれない。
もちろん、そう感じてしまうのはこのクルマ本来の姿、つまり泥だらけの未開地に踏みこむ真の多用途車ということを意識していないからだ。高重心を善しとして設計されるクルマが他にどれだけあるだろうか? 重心を上げることでオフロードでの底擦りや障害物との接触で主要な機械部分が損傷しないようになっているのなら、そのほうがいいではないか。
確かにオンロード性能は大したことはない。しかし、同じ「ディーゼル」でも質のいいアルパカ生地のスウェットの方が似合いそうな高性能のSUVたちが、空気よりも砂塵ばかり吸い込まされるアタカマ砂漠のようなところで10日間も無事に生きのびられるとは考えられない。
道路上では遅いクルマだが、これも短所だとはいいきれない。このクルマをレンジローバーに対するトヨタの答えだといってしまうと、ランドクルーザーのイメージが混乱するかもしれないが、(かつてイギリスでは、より大型のランドクルーザーを「アマゾン」の名前で売っていた)、レンジローバーのディーゼルだって20年前はこの程度のパワーしかなかったことを思い出してほしい。高級4WDの世界は変わってしまったのだ。
いざハンドルを握ってこのクルマの荒っぽいたくましさを感じとれば、そんなことはことさら心配しなくていい。トヨタの改良のおかげでエンジンはかなり静かになったし、ボディのシール性もよくなって風きり音も下がった。まだ4気筒ディーゼル特有のうなりは聞こえるが、いまや他の同じ4気筒ディーゼルのSUVに劣るところはないといえる。