メルセデス・ベンツSL500 ブルー・エフィシェンシー

公開 : 2012.03.08 18:38  更新 : 2017.05.13 12:53

■どんなクルマ?

最も有名で望ましい血統のメルセデス・ロードスターの6代目、新しいSL500だ。それは、パフォーマンスと効率、そしてリファインとダイナミズムを高い次元で融合したモデルである。更に、有頂天にさせる贅沢さと、オープンエア・スポーツのスリルをブレンドしたクルマでもある。

R231と呼ばれる新しいSLを造り上げることは、メルセデスにとっても大きな仕事となった。メーカーにとっても、ほとんどがアルミニウムで生産される初めてのプロダクション・モデルである。SLの洗練されたボディは、ダイキャスト、チルキャスト、スタンプキャスト、押出しキャストといった手法が組み合わせられたアルミニウムと、少量のマグネシウム、そして超高強度鋼によって造られる。軽量マグネシウム製のハードトップ・ルーフと、そのアルミニウムで製造されたボディは、乾燥重量を140kg減らすことに貢献している。更に重要なことは、コンバーチブルにダイナミックなパフォーマンスをもたらすのに重大な捻れ剛性を20%以上も増やしたことだ。

SLの2つのバリエーションが7月に英国で販売されることとなる。ひとつは4.7リッターのツインターボV8を搭載するSL500だ。429bhpのパワーと71.3kg-mもトルクを持ち、0-100km/hを4.6秒で駆け抜ける性能を持つ。それはSL63AMGとほぼ同等の速さだ。しかも燃費は11.0km/lという値を叩き出す。

サスペンションは、前モデルと同じマルチ・リンクの4輪独立懸架。スチール・スプリングと調整可能なダンバーは、V6 SL350とSL500に標準だ。エア・スプリングを使用したアクティブ・ボディ・コントロールは、両方のモデルにオプションで、秋に登場するSL63AMGにのみ標準装備となる。

キャビンは厳格な2シーターのまま。もし、オケージョナルなリア・シートが欲しいと思うのであれば、それはあなたがSLのオーナーには成り得ないということである。

■どんな感じ?

すべて新しいアンダーボディではあるが、SLのベーシックなコンセプトとプロポーションは受け継がれている。長いボンネット、ショート・キャビン、そして折りたたみ式のメタル・ルーフを収めるために必要なバックエンド。そのスタイリングは、このクルマへの投資に見合うだけの正当性がある。新しいフロント・グリルとヘッドランプはフレッシュなイメージをもたらしているし、ボディサイドの綺麗なラインは、栄光の1960年のパゴダルーフのSLを思わせる気持ちよさを感じさせる。全体としては非常に考えられているプロポーションではあるが、SLKやSLSの後に、もうひとつドロップトップのクローンを持ってきたようなプレーンなデザインである。

豪華なレザーとクールなメタルトリム、そして魅力的な空力を考えられたインストルメントを与えられたシートは、若干広くなっている。そのシートに腰を下ろし、シルバーのスタータ・ボタンを押す。すると、SL500のV8エンジンは、覆うような咆号で目覚める。アイドルでは非常に静かで、街中でも僅かにその雄叫びを増やすだけだ。フロアのアクセルを踏み込んだ時だけ、そのサウンドを大きくする。しかしそれは柔和で洗練されたサウンドだ。

不気味なまでのスムーズさが、このクルマの特徴をよく表現している。枕のような上品さでSLを静止状態からスムーズに走らせる。それはどんなエンジニアであっても、このようなスムーズさは念入な開発が行わなければ、もたらすことは不可能だと言うだろう。

荒れた路面であっても、完全な船旅を妨げることはない。最悪な路面であっても、滑らかな表面をすべるように走る。われわれが探しだしたスペインの太陽によって反ったような旧くて狭い裏路地であっても、新しい舗装の高速道路を走っているかのような印象だ。クルマはスプリングの下で穏やかに上下に揺れる。しかし、ショックアブソーバは、それを見事に吸収し、ドライバーにその動きを伝えない。ルーフを上げていても、ボディが引っ張られるような感覚は皆無だし、ステアリング・コラムからの身震いも、バックミラーからのシミーもない。オープントップのモータリングとしては、これ以上のものはないだろう。

メルセデスはSLの最初のプレス試乗会で、スティール・スプリングとエアサスの両方の車両を用意した。エアサスのアクティブ・ボディ・コントールは「コンフォート」と「スポーツ」の2つのモードがあるが、われわれはステアリング・フィードバックが良く、一定したホイール・コントールができる通常のサスペンション・モデルのほうが好みであった。但し、どちらであっても、SL500はイージーで労力を要しないドライブが可能だった。

トランスミッションのポジションがDの時、オートマチックギアボックスのキックダウンが少しスローに感じるかもしれない。しかし、より速さを求めるのであれば、SL500は非常によく反応する。キックダウンをすることなく、トルクの大きなエンジンがぐいぐいとコーナーをかわしてくれるのだ。71.3kg-mというトルクはやはり魅力的である。しかも、AMGでないこのミッドレンジのSLでさえ、スタンディングスタート160km/hを10秒未満でこなしてしまうのだ。

また、ブレーキも強力でフェードもない。もし、あなたがコーナーに少しばかり速く侵入したとしても、そのグリップ力の高さに驚くだけだ。シャシー・バランスの限界は想像以上に高い。SLのノーズがトリッキーになった時こそが、その限界に達した時なのだ。

ステアリングの重さとセンターの正確さは変動する。低速のバンプがあるとホイールアーチの中でタイヤが暴れて、僅かにクルマの安定性が損なわれることがある。スピードが上がるにつれ、アンダーステアは徐々に高まり、EPSシステムが効き始める。

とにもかくにも、その速度においてはアストン・マーティン・ヴァンテージ・ロードスターやポルシェ911ロードスター、そしてジャガーXKを上回るといえるだろう。

■「買い」か?

イエス。安定性と精度に関する評価軸を上げたとしても、SL500は10点満点を取るだろう。見事でひたむきなロードスターをメルセデスは造り上げた。テスターの経験上、ベントレーやアストン・マーティン、そしてロールス・ロイスよりも素晴らしい1台といえるだろう。

(マット・ソーンダース)

メルセデス・ベンツSL500 ブルー・エフィシェンシー

価格 82,000ポンド(1,050万円)
最高速度 250m/h(リミッター)
0-100km/h加速 4.6秒
燃費 11.0km/l
Co2排出量 212g/km
乾燥重量 1785kg
エンジン V8 4663ccツインターボ
最高出力 429bhp/5250rpm
最大トルク 71.3kg-m/1800rpm-3500rpm
ギアボックス 7速オートマティック

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