回顧録 スーパーDセグメント対決 BMW M3 vs C63 AMG vs レクサス IS F 後編

公開 : 2018.04.01 17:10  更新 : 2021.01.30 21:38

最後の逆転劇

荒野を貫くこの道は、一見したところでは無害に思えるが、走り始めると鋭い牙を剥いてくる。目に見えないバンプもあれば傾斜したところもあって路面はめまぐるしく変化するし、下り坂には段差も隠れている。その路上で、2台は幾度となくパンチの応酬を繰り返した。C63がパワーにものをいわせれば、M3はより繊細なダンピングで応える。あまりにその差がわずかなので、互角と結論付けるべきではないかとさえ思ったほどだ。

強いて言えばC63のほうがオールラウンダーとしては優れており、洗練度、速さ、そしてステアリングで勝っている。もしこれらを最重要視するのであれば、C63が勝者ということになる。

しかしこの日のこの路上では、ごくごく僅差ではあるが、M3のほうがスリリングな走りでわれわれを楽しませてくれた。ドライビングに関与する余地をより多く提供(そして要求)してくれたのだ。マニュアルのギアボックスは右足と推進力もしくはコーナリング姿勢との関係をより濃密にしてくれるし、標準装備のLSD(C63ではオプション)はタイトコーナーで有利だった。

M3のエンジンは強烈な加速力や低速での太いトルクではC63にかなわないものの、パワーデリバリーがよりメカニカルで回り方に精密感がある。8300rpmまで回したときのサウンドも、パーフェクトとまではいえないまでも魂に深く染み入ってきた。しかもそれでいてM3のほうが安い。

ほんのわずかな差だが、それでも勝利には変わりない。今回の勝者はM3だ。

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