ロンドン市街地での自動運転トライアル 実際に試乗 市民の反応は
公開 : 2018.04.07 11:40 更新 : 2018.04.08 17:39
実際に乗ってみると
サイクリストや歩行者と共用する狭い道を走るゲートウェイ・トライアルでは、安全上の理由からポッドの速度は14.4km/hに制限されているが、設計上は76km/hまで出すことができる。「サイクリストや歩行者がいる中で走行することで、初めて自動運転の難しい課題がわかるのです」とウェストフィールド・トライアルの責任者であるアンディ・フロストはいう。「重要なのはこの点です。荒野の広く開けた道でなら、自動運転試験なんて誰でもできますよ」
ゲートウェイのために選択された道路は、もちろん広く開けてもいないし、荒野でもない。幅8mほどで、氷の張ったテムズ川への転落事故を防ぐため、片側には鉄製の手すりが設けられている。反対側にはO2との境界となる侵入防止のセキュリティフェンスが張り巡らされている。通路は二つのレーンからなる。サイクリストや歩行者を分離するためだ(紙の上の話だが)。ゲートウェイのポッドはO2側のレーンを走行する。「執事」役(緊急時に対応する)のフロストの横に座った私は、前方の歩行者やサイクリストを映し出すカメラの映像をタブレットで見ることができる。
本誌の試乗ではルートを往復したので、今回のトライアルの良い面、あまり良くない面の両方を見つけることができた。行きの試乗ではポッドはためらいがちで、邪魔になる歩行者やサイクリストと遭遇するたびに何度も停車した。「考えあぐねているように感じられるかもしれませんね」とフロストはいう。
これはプロトタイプであり商品化のための作りこみはされていない。なので、ブレーキ・アクチュエータの発する金属音や停止の際のギクシャク感も無視することにしよう。このようなトライアルでは、制御アルゴリズムの大部分は慎重さ、用心深さのために費やされる。特に電動のポッドはほとんど走行音がしないので、周りの人がその存在に気づきにくい。
ここで自動運転のクルマの設計課題がひとつ浮き彫りになる。ポッドは角が丸まっており親しみやすい外観なので、多くの人は走行優先権を持つ乗り物だとは思わないのだ。今後の自動運転のクルマあるいはポッドには、歩行者やサイクリストが道を譲ってくれるような外観上の強いインパクトが必要かもしれない。そうでないと、移動速度のアドバンテージが絵に描いた餅で終わってしまう。