ロンドン市街地での自動運転トライアル 実際に試乗 市民の反応は
公開 : 2018.04.07 11:40 更新 : 2018.04.08 17:39
制御アルゴリズムには課題も
このポッドには4種類のセンサーが使用されている。ロング・レンジの77GHzレーダー(3個)、ミッド・レンジのライダーと呼ぶ光レーダー(2個)、カメラ(5個)、それにパーキング・センサーと類似技術の超音波近接センサー(20個)である。バックアップとしてミリタリー・グレードのGPS信号を使ったナビゲーション・システムが使用され、複数チャネルのガイド情報はCAVスターで処理される。CAVスターのソフトとハードは軍事技術に強い英国企業フュージョン・プロセシングが開発した。
フュージョンのブラック・ボックスの処理能力に関する情報は開示されていないので、ブレークスルーがあるのかどうかの判断は困難だ。しかし社長のジム・ハチンソンはその処理能力に関して自信満々である。「われわれはもう90%まで来ています。システムの完成ももうすぐですよ」
しかしながら、試乗してわかったことはゲートウェイの動作には洗練と粗雑が入り混じっているということだ。通路が空いている時はポッドの速度は上限値の14.4km/hまで上昇し、緩やかなカーブではまるでベテラン運転手のように滑らかに走行する。
しかし、鉄製のポストとの間に最小限のクリアランスしかないタイトなコーナーに差し掛かると、途端にスピードを落として何とか通り抜けるという感じである。クリアランスは両サイドとも300mmに設定されている。人間の運転手であれば慎重に、しかし明らかにもっとスムースに通り抜けるだろう。「あそこはこのルートの中でも一番の難所なんです」とハチンソンはいう。しかしわれわれは、制御アルゴリズムを煮詰めるには今後かなりの時間が必要だろうと感じた。
それより印象深かったのは、乳母車を押している若夫婦が道路の端を歩いている時にポッドがどう対応したかである。過度に慎重な制御アルゴリズムなら、ポッドを停止させたことだろう。しかしフュージョンの意思決定マトリックスは、人間の運転手と同じく慎重すぎることなく無事通過した。危険が散在する環境における安全制御のマージンを、ゲートウェイが新たなレベルに引き上げたことは確かである。先日、ウーバーの自動運転試験車が歩行者をはねてしまうというニュースがあったが(自動運転のクルマが人を死亡させたのは初めてだ)、安全性と一般人の理解という両面で自動運転の技術を実用的なものにしていくには、従来にも増して慎重に一歩一歩進めていくしかない。このニュースの教訓である。