ポルシェ 911 GT2 新車当時の評価は? 回顧録 前編
公開 : 2018.04.14 09:10 更新 : 2018.04.14 09:18
現代のヒーローが乗るマシン
そうして得られたパワーを伝達するトランスミッションは現時点では通常の6段MTで、ギアレシオはターボよりもわずかながらワイドになっている(が路上で運転していて気づくほどではなく、下の5段での加速は空腹の猛犬が餌に突進するときのような強烈さである)。
GT2のトルクに対応したDSGをポルシェが製造できれば、即座にその仕様も追加されることになるだろう。ポルシェが1980年代にすでにレース用DSGトランスミッションを開発しているのはご存知のとおりだが、それが搭載されたロードカーはまだ待たなければならないということだ。
もっとも、そうした周辺の事情がどうであれ、現代のデザインからすれば確かにGT2のトランスミッションは少々古臭い代物に見えるかもしれない。けれどこのクルマの強烈な個性からすれば、ある意味ではむしろこのほうが似合っているとは考えられないだろうか。
例えばアクション映画のヒーローが乗るクルマを作るとしたら、勇敢なパイロットは古き良き時代そのままに3ペダルとシフトレバーを操作するのが当たり前だと思わないだろうか。個人的にはそうあってほしい。
そして疑問の余地なく、GT2は現代のヒーローが乗るマシンである。LSDにとどまらず、トラクションコントロールや電子制御ダンパーまで与えられていようとも、その事実に変わりはない。実際、冒頭に述べたように、GT2は簡単に乗り込んで気軽にスロットルを開き、そのまま何事もなく走っていけるようなシロモノではないのだ。
そんなことをしようものなら、いかに強力なカーボンセラミックブレーキやファーストエイドキットが付いていようとも役には立たず、気づいたら道路わきの牧場で牛たちが上下逆さまに見えている理由を考え込むはめになるのがオチである。