ポルシェ 911 GT2 新車当時の評価は? 回顧録 後編
公開 : 2018.04.14 18:10
始動しただけで吹き荒れる驚愕の嵐
いよいよエンジンに火を入れる。エグゾーストノートはGT2のライバルとなる多くのイタリアン・スーパーカーが放つ野蛮な咆哮とはほど遠い。エンジンはほとんど間を置かずに落ち着き、アイドリングの脈動へと収束する。
軽くスロットルペダルをあおれば「GT2とはどういうクルマなのか」について、最初のテイスティングイメージが得られるだろう。アイドリングからでもレスポンスは閃光のごとく素早く、リアクションは911ターボよりも敏速で力強い。まるで圧縮比が高められているかのようにも(実際は違うが)感じられるが、それこそ吸気効率を大幅に改善した恩恵だろう。
驚くべきは、それがキーをひねった直後に明確に察知できるという事実である。
クラッチを踏むと、911ターボよりも踏力を要求され、バルクヘッドに届くまでのトラベルが短くなっているのに気がつく。シフトレバーにも同様の違いがある。ゲートまわりの動きはさらなる緻密さに満ちていて、そして頑強な剛性感が加わっていることも感じ取れた。911ターボより強めの抗力と明瞭感を伴いながら、寸分の狂いもなくカチリとポジションに吸い込まれていく。そしてこれら一連の動作のなかでじわじわと存在感を表してくるのが、巨大なサイドクッションを備えたバケットシートの揺るぎないサポートである。