リスター・サンダーに試乗 ジャガーF-タイプ・ベースの「モンスター」
公開 : 2018.04.21 16:10
ばかばかしいまでの見た目と性能
これもまた相当なクルマだ。濡れた道を675psのF-タイプで走ろうものなら、道端の石壁でボディパーツを傷つけるのがオチだというかもしれないが、現実はまったくちがう。
サンダーは直線ではめざましく速いが、スーパーチャージャーのパワーの出かたはすばらしくリニアだから、サンダーに匹敵するターボ車のライバルのように不意に瞬間移動するかのような感じにはならない。
おまけに、あこがれのGTカーにふさわしく、サンダーは連続するコーナーもリズミカルに駆けぬけることができるのだ。底なしかと思わせるトルクをもってすれば、足取りもどうにでもできる。
駆動力も強烈だ。とくにこういう状況だと、前輪にもドライブシャフトがあるのがありがたい。もし後輪駆動のみだったら、よほど自信過剰でもなければパワートレインの能力の2/3も出せないだろう。
このばかばかしいまでの見た目と性能なら、緑のリップでおめかししたノーズがコーナーの内側を向いて外側のスプリングに荷重がかかったとたんにスロットルをガツンと踏みこみたくなる。
ホットロッドみたいに映るかもしれないが、あれはただの見た目勝負だ。サンダーはツーリングカーとしてもあなどれないほど快適なのだ。このぶっとい排気管をふさげる消音バルブがあればの話だが。
内装も古きよき時代を思わせる良い出来だ。黒のレザーはブリッジ・オブ・ウィアー製で、緑のステッチが隅々まで張りめぐらされる。空調の吹き出し口やステアリングホイールには元ネタのジャガーのロゴが残るし、ダッシュボードのモニターもあわせてまだ体裁はととのっていないが、全体的には特別あつらえの雰囲気十分だ。
乗ってみた全体の印象をひとことでいうなら、操作系や構造的にはわずかに古いかんじもするが、低く沈んだドライビングポジションと高いスカットルによって囲まれ感が強く、いかにも操縦席といったところ。なにはなくとも、個性的な空間だ。