AMGやBMWほどの仕上がりは得られていない

走り出しは悪くなかった。しかし残念ながら、不満を抱きながら走り終えることとなった。俊足な4ドアサルーンとして、もっとダイナミックな走りを想像していたのだけれど。

このクルマのスペックを詳しく知らない人が、AMG E63 Sと乗り比べて、どちらの方が最高出力で勝るかと聞かれたら、きっとAMGだと答えるだろう。正直、ハンドリングも、ベストとはいえない。

一般道において、数秒以上の全開加速をすることは不可能ではある。しかし、AMG製のV8が発生させる分厚いトルクは、その数秒を最も密度の濃いものにしてくれる。まさに記憶に残るエンジンだ。

BMWのトルクカーブはかなりフラットなものだが、エンジンの回転数が上がるほどフィーリングも良くなる。そのため、M5の方がE63よりも幅広い回転域を有効に使っての走行が可能だといえる。

その反面、CTS-Vはといえば、耳に届くエグゾーストやスペックから期待するような、過激なパワーデリバリーを感じ取ることができないのだ。またBMWのV8のように、キャデラックのエンジンも前面に出てくる存在感のあるものでありながら、それを活かすため、サスペンションを柔軟に動かせるプラットフォーム構成が得られていないことも残念。直線加速時のグリップやトラクションに加えて、垂直方向のボディコントロール、まれに安定性においても満足できる仕上がりとはいえない。

ただ、大きなアメ車として親しみをもって評価するとすれば、クイックなステアリングの反応と、リアサスペンションの柔らかな設定との組み合わせは、いかにも、という感じ。コーナーリングを終えて加速するとしても、大統領がゆっくりと握手を交わすように揺らぎ、落ち着くまでに時間を要してしまう性格は、いかにもアメ車っぽい。

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